デュラララ!

□あの娘みたいに笑えたら
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※臨也(18:高校生)×帝人(21:大学生、就活中)

竜ヶ峰 帝人はリクルートスーツ姿で人混みの中に立っていた。
休日だということもあり、周りを歩くのはカップルが多い。
「あの娘も――」
お揃いのリュックを背負った高校生カップルが手をつないで隣を歩いていく。
「あの娘も――」
社会人と、OLの社内恋愛らしいカップルとすれ違う。
「あの娘も――」
仲の良さそうなおじいさんとおばあさんの夫婦が腕を組んで店に入っていった。
その様子を目で追ってから、空を見上げて呟いた。

「みんな笑ってる……」

呟きの通り、恋人との時間を楽しんでいる人々達は笑顔だった。


帝人には恋人がいた。
年下の高校生で情報屋の、名前は折原 臨也。
同じ高校の後輩で、帝人が卒業するときに告白されて付き合い始めた。
それからは、チャットをしたり帝人が臨也の家を訪ねたりと順調な交際を続けていたのだが――。
帝人には気になることがあった。
「愛してる」とか
「大好き」とか
「君を離したくない」だとか言われるのは嫌いじゃない。
むしろ、好きだった。
けれど、問題なのは表情だ。
臨也はいつも笑っている、それが不安だった。
自分といて楽しいのか、それとも……?

また、帝人の隣をカップルが歩いていく。
もちろん、二人とも純粋な笑顔だった。
「あの娘みたいに笑ってくれたら……」
呟いてみた望みは、実現しそうも無い。
帝人はため息をついて、また歩き出した。


臨也の住居兼事務所のマンションに着き、エレベーターの最上階のボタンを押す。
「おかえり、遅かったじゃないか」
「企業説明会だったから……なに、その格好」
帝人を待っていたらしい臨也は、いつものファー付きのコートではなく普通のスーツを着ていた。
「ん?あぁ、帝人さんがいつもちゃんとした服を着ろってうるさいから」
「へー……」
臨也はその場でくるりと一回転して見せるが、帝人の反応は冷ややかだ。
……高校生のクセして、なんでこんなに似合うんだよ!かっこよすぎだって、臨也君!!
とか、心の中では思っていたりするのだが、一切表情には出さない。
「スーツなんてよく持って――」
「……帝人さん」
「なに?臨也くん……って、え……?」
部屋の声をかけられて振り向くと、臨也の手が帝人の肩をつかんで、そのまま壁際に追い詰めた。
「……ちょっと……なにして……」
背中がコンクリートに当たり、逃げようとした帝人の頭の横に、もう一方の腕が伸びてきて逃げられない。
「帝人さん、今日なにかありました?」
帝人の顔を下から覗き込んで、臨也は冷静に尋ねる。
「……」
あるとすれば、臨也の笑顔のことだけだった。
「べ、別になにも……」
「嘘でしょ。……もしかして俺、なにかした?」
「ち、違っ……」
「じゃあ、なに?」
臨也はいつも通りに笑った。その笑顔を見て、帝人は余計不安になる。
「…………臨也君はいつも笑ってるでしょ」
「そうだね、俺は笑ってる」
そして、いつも以上に笑ってみせる。
「ほ、本当に……楽しいから笑ってる……?」
上目づかいで恐る恐る聞いた帝人は、臨也の顔が一瞬だけ驚いたのを見た。
「困ったなー、そんなつもりじゃ無かったんだけど」
臨也は頭に手をあてて悩んだような顔をして、答える。
「帝人さんのことが好きだから。一緒にいると幸せだから笑うんだよ。つまらなかったら、無理になんか笑わないから。それは帝人さんが一番知ってるでしょ」
その言葉にも帝人は照れる。でも、平然を装う。
「だから――帝人さんも笑ってよ、照れてよ。クールにしてないでさ」
そういえば、帝人自身も意識的にあまり表情を変えないようにしてきた。
そこでやっと帝人は気が付いた。
「そうか、僕が――」
帝人は急に泣きそうになって声が震え、視界も涙で潤んでいく。
「僕が、あの娘みたいに笑えたら……良かったんだ。そうすれば、臨也君の笑顔も本物だって思えたかも……」
「今からでも遅くないよ、笑って?」
帝人は潤んだ瞳のまま、臨也の言葉通り素直に微笑みかけた。
その無防備な笑顔をした帝人の唇に臨也はキスを落とす。
「ん……」
優しいキスの後に、臨也は少し寂しそうな顔をして帝人を抱きしめた。
「俺だって不安なんだよ。まだ高校生だし、帝人さんを幸せにできる自信もない」
「僕がする、臨也君を幸せにするから――」
「ダメ、俺に幸せにさせてよ。帝人さんが幸せだと俺も幸せになるからさ」
年上としてのプライドが傷つきながらも、帝人は臨也の言葉が嬉しくて照れた。
「……今でも十分幸せだよ」
臨也の顔を両手で挟み、目線を合わせて囁いた。
「だから、あの娘みたいに笑ってて……」
もう一度、帝人が優しく心からの笑顔を臨也に向けると、臨也も見つめ合いながら自然と笑った。

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なんか激甘な展開です…。
ココアにキャラメルを投入したくらい甘過ぎでスイマセン。
また機会があれば参加したいと思います。
お粗末様でした。

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