ファイヤーエンブレム聖戦の系譜

□血縁
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村を後にした二人は来た道を本隊と合流するために馬を走らせていた。すっかり日も落ち、辺りも薄闇に包まれていく。
「ナンナ、もう辺りも暗いしこの辺で野宿をしないか?」
「そうね」
二人は簡易テントを張り、焚火で暖をとるように腰かける。
「ナンナ」
ぼーっと火を見ながらアレスが呟いた。
「なに?」
「お前、この戦争が終わったらレンスターに行くのか?」
「え?私がレンスターに?どうして?」
「お前、リーフのお妃候補じゃないのか?」
「え!!私はリーフ様のことは兄弟にしか思えないし、フィンお義父様も義理はあるけど、お母様の実家でもあるアグストリアの再興を手伝うつもりなんだけど、迷惑?」
「いや、それは心強いな」
「アレスこそ、リーンを妃に迎えるつもりなんじゃないの?」
「いや、リーンとは別に恋人同士じゃないし、孤児同士でお互いに同情しあってただけだ」
「そうなんだ」
二人は沈黙の中でお互いを見つめる。
バサバサと羽を翻す音が聞こえたアレスは身構えた。
「敵か!!」
「違うわ、この音はフィー!!」
「二人ともやっと見つけた!!」
愛馬であるマーニャが一度嘶くとフィーは急降下してマーニャから飛び降りるとナンナに抱きついた。
「よかった。見つからないから何かあったのかと思ったじゃない」
「大丈夫よ。アレスが守ってくれたし」
ナンナは満面の笑みでアレスを見た
「へえー」
フィーは面白そうにアレスを見ると頬がうっすら赤く染まっていたのに気付いてにやにやしていた。
「それは、いいとして戦況と伝言を伝えに来たの。マンスター城は制圧して、敵のドラゴンナイト部隊を全滅させたわ。あとはミーズ城を攻略するだけよ。で、セリス様から二人は急がずに本隊に合流できるように戻ってきてくれればいいそうよ。山賊退治御苦労さまって言っていたわ」
「じゃあ、あとでね二人とも」
フィーはマーニャに飛び乗ると颯爽と飛び立っていった。
「とりあえず、今動くのは得策ではないからアレスここで今日は休みましょう」
「そうだな、ナンナはテントで休むといい、俺は火の番でもしながら、ここで休む」
「嫌、なら私も一緒に火の番でもするわ」
「いいから、俺は傭兵時代が長いんだ、こんなの何でもない」
「そうかもしれないけど、じゃあ、話をして傭兵時代の事」
ナンナはアレスの隣に腰かけると、ポツリと呟いた。
「たいした、面白い話でもないぞ?」
「うん...」
「母が死んで、数日たった頃レンスターの母の実家には金品を求めて夜盗が押し入ってきたんだ。俺は、ただ何もできず、魔剣ミストルティンを握りしめ、暖炉に息を潜めて隠れていた。夜盗は家の中の金目になりそうな物を片っ端から奪っていった」
「そう...」
ナンナは力なく呟いた。
「そして、夜盗が出て行った後、安心していたら、下の階から煙が..俺は煙を吸いながら死にものぐるいで家の外に出ると、さっき家の中を荒らしていた夜盗と鉢合わせしたんだ。そして、夜盗は剣を抜き俺に襲いかかってきた。」
「そんな...」
肩を震わせナンナは怯えた目でアレスをみた。
「もう駄目だと思った時、ジャバローが助けてくれた。そのあとは、ジャバローの隊に入り転々と傭兵として世界を駆け巡っていたんだ」
「怖くてしかたなかったでしょうに...」
ナンナは自分の事のように涙を流す。
「そうだな。あの時は、震えて隠れている事しかできなかった。だから、自分の無力さを呪い、強くなりたいとひたすら願った」
「私も、同じだわ。フィンお義父さまに守ってもらいながらブルーム王から息を潜めて、逃げ回っていた。早く強くなって守られるばかりじゃなく二人を守りたいって思ったわ。ただアレスと違って私にはフィンお義父さまとリーフ様がいた。一人で今まで生きてきたアレスとは苦労の大きさが違うけど。」
「俺は、ただ運命にしたがっただけだ。解放軍に加わった事で選択は間違っていなかったと思う。そのおかげで血縁であるお前と会えたから」
アレスは今までの事が吹っ切れたようにナンナにやさしく頬笑みかける。ナンナはアレスの思わぬ表情に動揺した。
「わ、わたしもうれしいわ。」
ナンナのうろたえる様子にアレスは不思議そうに見る。
「どうかしたのか?」
「なんでもない!」
「そろそろ休んだほうが良い。」
「そうね」
ナンナはそっと目を閉じる。アレスはナンナが寝入ってしまったのを確認するとナンナを引き寄せるようにして目を閉じた。
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