ファイヤーエンブレム聖戦の系譜

□銀色の世界で
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聖戦と呼ばれた大陸全土を巻き込んだ戦争も無事解放軍の勝利で終わり、聖戦士の血を引くものはそれぞれの国に戻った。3年の歳月も流れそれぞれの国は復興も進み、徐々に平和と言える日々が戻りつつあった。
銀色の雪景色が城の目の前に広がる。もうすぐ春の訪れがきてもいい頃だが、シレジア城には天使の羽と思えるような雪がふわふわとバルコニーに舞い降りていた。
「王妃様、そろそろ中に入られてはいかがでしょう?お体にさわります」
侍女は、心配そうな声色で言った。
「ええ、もう少ししたら戻るわ。でも、もう少しこの景色を見ていたいの」
ティニーはふふと笑う。
「では、お部屋に暖かいお飲物を準備してお待ちしております」
「ありがとう」
侍女は、一礼をしてバルコニーから部屋に戻っていく。ティニーは、落ちてくる雪をてのひらに乗せ、体温で消えゆく様子をしばらく眺めていた。
「きれい.....」
言葉と一緒に吐きだされた息は白く、空間に溶け込んでいく。
「この景色はあの頃と変わってないのね」

フリージ家の追っ手から隠れるようにして暮らしていた頃、人目につかないように雪景色の中を兄に手をひかれ、遊んでいた記憶が鮮明に甦ってくる。

「こんな所にいると風邪をひくよ」
背後から突然、愛しい人の声にティニーは勢いよく振りむいた。
「いつ、トーヴェからお帰りになったのですか?予定ではお戻りは明日のはずだったのでは?」
「ティニーの顔を見たくて早く戻ってきたんだ。こんなところで何をしていたんだい?」
セティは、羽織っていたマントをティニーにそっとかけると愛しそうに頬を撫でた。
「ほら、こんなに冷えている。早く中へ入ろう」
「セティ様、もう少しだけいいでしょうか?この冬景色をみていたら幼い頃の記憶が甦ってきて、しばらく見てみたくなったのです」
「そうだね。私もこの雪景色を見ると幼い頃の記憶を思い出す。フィーと二人で日に日に病で弱っていく母上を看病していた事とか.....」
セティはぎゅっとティニーを抱き締めるとせつない声で言った。
「セティ様、これからは戦争など起こしてはならないのですね。私達が経験した悲しみを誰にもさせないために」
ティニーはセティをぎゅっと抱き締める。
「そうだね。そのためにティニーはこれからも私の傍でいつも支えて欲しい」
「もちろんです。みんなが笑顔で平等に暮らせる国を築いていきましょう」
ティニーは花の綻ぶような笑顔をセティに向ける。
「ティニーとなら父上とお祖母様がめざしたシレジア王国が作れるかもしれない」
「ええ、これからは3人でシレジアを国民を守っていきましょう」
ティニーは自分のお腹にそっと手をあてる。
「まさか、ティニー」
「もう3月目にはいっているそうです。秋にはセティ様はお父上になるのですよ」
ニッコリとほほ笑むティニーをセティは、うれしそうを抱きしめる。
「フォルセティよ、見守っていて下さい。必ずシレジアを守っていきます」
雪の舞い降りる空を見上げセティは響く声で言い放った。

それからの後、シレジアは戦争を永遠に行わない中立国とし、セティ王のもと大国へと成長するのはまたもう少し後のこと。

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