ファイヤーエンブレム聖戦の系譜

□禁忌
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「ようやくシレジアにも春が訪れるのですね」
クロードは落ちてくる雪を手のひらで受けてみるとそれはあっという間に水に変わる。
「戦争で失われた魂達よ、安らかに眠りについてください」
クロードは目新しい墓の前で祈りを捧げていた。
「クロード様!」
その声にクロードは振り向くと愛しい恋人が走ってくるのが見えた。
「どうしたのですか?シルヴィア」
「クロード様のこと、探していたの。早く知らせたい事があって」
シルヴィアは、いつもの踊り子の衣裳で荒く白い息を吐きながら、うれしそうにクロードに抱きつく。
「シルヴィア、何か良いことでもあったのですか?」
「うん、あのね。赤ちゃんができたの」
「それは、本当ですか?」
クロードはシルヴィアを抱きしめる。しばらく微動だにせず、そのまま抱き締めていると不安からかシルヴィアが口を開いた。
「あの、クロード様、もしかして迷惑だった?赤ちゃんができたこと」
「まさか。感動して言葉もでなかっただけですよ。元気な子を産むのですよ」
シルヴィアはうれしそうに飛び跳ねる。するとシルヴィアの懐から何かが落ちた。雪の中から拾い上げると豪華な銀細工の時計のようなもので中央には紅玉がはめ込まれ、裏には紋章が彫り込まれていた。
「これは...」
クロードはそのペンダントをみて表情を堅くした。
「クロード様、どうかしたの?」
「いえ、何でもありませんよシルヴィア。これはシルヴィアのものなんですか?」
「うん、一座に拾われた時にはもう持っていたの。これがあたしが家族を探す唯一の手がかりなんだ」
シルヴィアは悲しそうな表情でぽつりとつぶやいた。
「そうですか...家族に会えることを私が神に祈りましょう。」
「うん、ありがとうクロード様」
「では、そろそろ城へと戻りましょう。体を冷やしてしまいます」
クロードは、そのペンダントをシルヴィアに手渡し、自分のローブをシルヴィアにかけた。


「やはり、妹だったのですね。」
すやすやと眠るシルヴィアに聞こえないようにつぶやいた。シルヴィアの背中にうっすらとみえたブラギの聖痕をみて血縁であることをクロードは悟っていた。
「あのペンダントは亡くなった母が幼い妹に渡したもの。裏には紛れもなくエッダ家の紋章があった」
幸せそうに眠るシルヴィアの髪をやさしく撫でる。
「決して兄だとは名乗ることはできない生まれてくる子供のためにも。ああブラギよ、この罪に対する罰は私一人が受けましょう。」
「クロード様.....」
シルヴィアが急にベッドから起き上がった。
「あたしはあなたを愛しています。あなたが兄だとしても」
シルヴィアの瞳から次から次へと涙がこぼれ落ちる。
「シルヴィア...聞いていたのですか」
クロードは、その涙を指で拭うとそっとシルヴィアを引き寄せた。
「知らなかったとはいえ、私たちは禁忌を犯してしまったのですね。許されないことかもしれませんが生まれてくる子供に罪はありません」
「生んでもいいの?」
「もちろんです。これも運命なのでしょう」
シルヴィアは不安そうにクロードをみた。
「シルヴィア、私はあなたが妹だと知った今も変わらず愛しています」
「はい、あたしもクロード様を愛しています」
クロードはシルヴィアにそっと口付ける。



この戦いはバーハラの地で敗北に終わります。私も命を落とすでしょう。やがて平和な世界は必ず訪れます。だからシルヴィアは子供達と元気に生きるのですよ。

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