ファイヤーエンブレム聖戦の系譜

□城下町にて
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「ふぅ〜やっとお城から抜け出せた」
パティは解放軍時代の洋服を着て足取りも軽く城下町に向かって歩いていた。
「置き手紙はしてきたし、たまにはいいよね」
パティは長く輝くブロンドの髪を束ね、脇差しには銀の剣を携えていたが、その雰囲気からは美しさが醸し出されていた。そのせいか通り過ぎる男達がちらちらと視線を送るがパティはまったく気付かない。
「大分、賑やかになってきたわね」
街には、屋台が連なり各々のから良い匂いが漂っていた。
「おばさん、それ1つ頂戴」
「はいよ。3Gね」
パティは、お金を手渡すと焼き鳥においしそうにかぶりつく。そして、さり気なく街の治安を聞いた。
「おばさん、この辺の治安はどう?」
「小競り合いなんかはたまにおきるがね。グランベル兵が定期的に見回りもしているし、アルヴィス皇帝が治めていたときとは雲泥の差だよ」
「そうなんだ」
「美人のお嬢さんは、この辺の子かい?」
「えっ!おばさん、あたしが美人って?」
「ブロンドの髪に碧眼の瞳に色白の肌。それだけのものを持っていたら周りがほっとかないよ。さっきから、男どもがちらちらあんたを見ていたのに気付いてなかったのかい?」
「全然気づいてなかった。くぅ〜この言葉をいつも色気がないって子供扱いするお兄ちゃんに聞かせたい」
「兄がいるのかい?」
「うん、結婚したから別々に暮らしているけど、兄さんはユングヴィにいるの」
「へぇ、そうなのかい。知り合いがユングヴィに住んでてね。国民の事を考えてくださると新しい公爵様をとても誉めていたよ。」
「へぇー、そうなんだ。」
「まぁ今じゃどの国も帝国支配の時代とは違って住みやすくなってるって聞くしね。これもセリス様のおかげなんだろうけどね」
「ありがとう。またね!おばさん」
パティはうれしそうに手を振ると屋台を後にした。
「はて、なんでセリス様を誉めたら、あの子がお礼を言うんだろう?」
屋台の女主人は首を傾げた。



「お兄ちゃん、公爵として頑張っているのね」
考え事をしながらしばらく歩き、雑貨店の装飾品を見て回る。
「今度の修道院の慰問で子供たちに配ろうと」
パティは、子供たちが喜びそうな人形やら木彫りの置物などを買い求めていく。満足そうに町中をあるいていると叫び声が聞こえてきた。声のした裏通りに足を踏み入れようとすると、髪を乱しながら走ってくる少女がいきなりぶつかって来た。
「助けて!」
少女はパティにすがりつく。
「どうしたの?」
「借金が返せないなら、身売りをしろって言われて男たちに追われてて」
少女が話し終わると、男たちが追ってくるのが見える。
「とりあえず大通りに出るわよ」
パティは少女の手を引くと走りだした。
「待て」
追ってくる男たちは執拗に追ってくる。
「あっ」
少女は足がもつれ倒れた。パティは少女を抱き起こしてぼそっとと呟いた。
「あんまり、派手な行動はしたくなかったけど仕方ないか」
パティは、脇差しから銀の剣を引き抜く。
「お嬢ちゃん、その女を渡しな!」
見るからにガラの悪い、品の悪い男たちに囲まれる。
「嫌だと言ったら?」
「そんな、物騒な物はしまって、帰った方が身のためだぜ?お嬢さんも身売りされたくなかったらな」
いやらしい顔つきでパティを舐めるように見た。
「ふん、あなた達が私より強いならね」
男はその言葉に怒りの表情をすると、脇差しから鉄の剣を引き抜き、パティに襲い掛かってきた。それを華麗にかわして男の脇腹に一撃入れる。裏通りでは人は少なっかったが、大男相手に若い娘が圧倒するほどの強さで戦っている様子を見て住民は徐々に集まり歓声をあげる。
「そんな攻撃じゃ当たらないわよ」
パティは不適な笑みを浮かべる。
「くそっ!てめえ何者だ」
「あんたらに名乗る名前は無いわよ」
パティは少女を後ろに下げさせると、男を睨み付ける。美しく剣を振るうその姿は戦乙女そのものでブロンドの髪が動きと一緒に華麗に舞う。大男は、攻撃をしかけるがかすりもしないのを悔しそうな表情で荒い息を吐いていたが、パティは、対照的に息ひとつ乱してはいない。
「だいたい身売りはグランベルでは禁止のはずよ!」
「だからなんなんだ。払えない金は身で支払ってもらうのが筋ってもんだろう?そういや、今のグランベル王セリスは、国民が平等で平和な世界を作るとかほざいてやがったな」
男はばかにした顔で言う。
「なんですって、セリス様を侮辱するなんて...絶対ゆるさない!かかってきなさいよ」
パティは、怒りの表情で銀の剣をかまえる。男たちが次々とパティに襲いかかるが、攻撃は全部避けられる。峰討ちにされた男たちは呻きながら道に倒れた。
「助けは必要なさそうだけど、俺も助太刀しますよ。」
その声がしたと思うと、5人の男はあっという間にバサっと倒れていく。
「やっと見つけましたよ、パティ王妃」
「王妃!」
男達はその言葉に驚いたが、剣を構えなおすとスカサハに飛びかかってきた。
「そんなんじゃ、剣がもったいないよ」
スカサハは、銀の大剣を片手で軽く回すと5連続で攻撃を入れる。
「知らないとはいえオードの血族2人に剣で立ち向かってくるとはね」
スカサハは、ひとり言のように囁くと倒れている男たちを見る。
「くそ!」
とうとう一人になった頭領は、それでも抵抗するのか剣を構えてパティに向かってきた。
「無駄なのに」
パティは、ろくに男を見ることもなく溝打ちへ一撃入れると男の喉元に銀の剣を突き付けた。
「準備運動にもなりませんでしたね」
「ええ、どうしてスカサハはここへ?」
パティは、喉元に剣を突き付けたままスカサハと会話をする。
「セリス様と二手に別れてあなたを探していたんですよ」
「セリス様、怒っていた?」
「怒っているというよりは心配していましたね」
バタバタと足音がしたと思うとグランベル兵士達が現れた。
「スカサハ様!」
「この者たちをひっ捕らえよ。手配書の人身売買を行なっている者達だ。禁じられている身売りをさせようとしていただけでなく、王妃を手に掛けようとした罪でな」
「はっ!」
グランベル兵士たちは倒れている男たちを次々と連行していく。そして、パティは放心状態の少女を振りかえるとにこっと微笑んだ。
「もう、こんな事が起きないようにこの国を良くしていくから安心して」
「とんでもございません!こちらこそ、王妃様とは知らずにご無礼をお許しください」
少女は俯き膝を付き、弱々しい声で言った。
パティは少女を立たせると素早く耳元で囁いてその手に金貨を数枚握らせる。
「また、遊びに来るから、その時は町を案内してもらうから、その時の案内賃としてこれはとっといて」
パティはバイバイと手を振るとさっそうと歩きだした。



「パティ!」
声のした方を見ると、グランベル王セリスが少し怒り顔で立っていた。最小限の兵士だけを引きつれて。
「セリス様」
パティは少し困った顔をするとすかさず謝った。
「ごめんなさい、かってに城を出てきて」
「心配したよ、顛末はさっき全部スカサハに聞いた」
スカサハは、そんな二人の様子を見て微笑んでいる。
パティは、かなりの人だかりができていたが気にせずにセリスの胸に飛び込んだ。
「パティ.....」
セリスはパティをひとしきりにきつく抱き締める。
「無事で本当に良かった...」
セリスは、愛しい妻をやさしい眼差しで見つめると自分の白馬の前部にパティを乗せると、自分もパティの後ろに馬に跨り王宮に向かって歩きだした。
「あのね。セリス様が直接迎えに来てくれてうれしかった。この頃公務で忙しくてろくに会話もしてないでしょう?少し不安になったの」
パティは淋しそうなトーンで言った。
「パティ.....」
「なんてね、そんな我儘言ちゃいけないよね」
パティは雰囲気を変えようと明るい声で言った。
「淋しい思いをさせていた事は僕が悪かったけれど、黙って城から出たお仕置きはうけてもらわないとね」
「えっ?」
セリスは意地悪な顔でパティの耳元でそっと囁いた。
「今夜は、朝まで寝かすつもりはないから覚悟して」
低く言ったセリスの言葉に甘い響きを感じて思わず顔を真っ赤にして絶句してしまったパティだった。

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