ファイヤーエンブレム聖戦の系譜

□白いバラ
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解放軍の勝利で聖戦は終わったが、アグストリアは荒れ果て内乱が各地で起きていた。
「内乱が起きているのね」
ナンナは悲しそうにつぶやく。アレスはナンナの言葉に厳しい表情で小さく頷いた。
「ああ、民のためにも、この内乱を一日でも早く鎮めなければいけない」
「そうね、私も微力ながら戦うわ」
「ナンナ、お前はトリスタンとジャンヌとともにノディオンで待っていてくれないか」
「何を言っているの?私も内乱をおさめるために戦うわ。私はディアドラ様のようにはなりたくない.....」
強い意志を秘めた眼差しで言うと愛馬にさっそうと飛び乗った。
「分かった。たがこれだけは守ってくれ。俺の傍を絶対に離れるな。」
愛馬の黒馬に乗るとアレス達を含めた小隊は王都アグスティへと馬を走らせた。


「何者だ!!」
男達はアレス達を睨む。その傍らで震える親子が不安そうに見ていた。母親の腕には血がにじんでいる。
「お前たちに名乗る名前は持っていない。民達への強奪や殺戮はやめてもらおう。」
アレスは魔剣ミストルティンを構えると男達との間合いを詰めていく。男達は戦う前からアレスの異常な威圧感に額から汗が流れている。
「こんな所に長居は無用だな。アレスさっさとこいつらを片付けよう。」
「ナンナは下がっていろ。」
アレスはナンナを小隊の後ろへと行くように促す。
「では、行きますか」
デルムットは言うと銀の大剣を脇差しから引き抜いた。
「なんだと!!なめやがって」
山賊たちは、武器を持つと次々と襲いかかてくる。
アレスとデルムッドは敵の攻撃を一度も受けることなくあっという間に山賊は10人ほど倒れていった。
「なんだ、口ほどにもないな。」
アレスは残りの山賊を冷ややかな表情で見る。
「この!」
アレスの完全に舐めた態度に山賊達は激昂したが一向に攻撃が当たることはなかった。
「まだ、戦いをやめる気はないのかい?」
デルムッドは半ば呆れ顔で言うと今度は鋼の剣に持ち替えた。山賊との抗争の中でそっと小隊から離れ、ナンナは傷を負っている親子の元へと近づき、リライブの杖を取りだした。
「アグストリアは、必ず平和になるからもう少し辛抱して下さい」
リライブの杖は温かい光を放ち、母親の傷口が塞がっていく。
「もうこれで大丈夫。あなたたちは今のうちにこの場を離れて安全な場所に」
ナンナは怪我はしていないもののすっかり怯えている男の子の汚れた顔を自分のハンカチでそっと拭った。「怖かったよね。早くここを離れてお母様と仲良く暮らすのよ」
男の子はナンナの言葉にこくと小さく頷くとニコッと微笑んだ。
「ありがとうございます。」
「そうはさせないぞ」
山賊がナンナを後ろからハガイジメにする。
「離しなさい!!」
ナンナの声にアレスは、はっと振り向くと、必死にナンナが山賊に捕らえられていて藻掻いている姿を捕らえた。アレスは山賊を倒しながら、近づこうとするがナンナの喉元にナイフが突き付けられているのでそれ以上距離を詰めることができない。
「おっと、この娘の命が惜しければ今すぐ武器を足元に置くんだな」
「くそ」
「アレス、兄上、私にはかまわずに山賊達を倒して下さい。二人にはアグストリア再興という大きな目標があるはず。私がいなくてもアグストリアは再興できるはず、何が一番大事かよく考えて」
潔く言い放つナンナのあまりにも神々しい表情にアレスは言葉を失った。まるで死などまったく恐れていない様子に。
「黙れ、殺されたいのか!」
山賊はナンナが苦しむように力を入れる。
「私を早く殺しなさい、そうすれば二人は自由に動けるようになるし。まぁ、すぐにあなたも死ぬことにはなるでしょうけど。」
ナンナの言葉に山賊はぐうの言葉も出ない。
「お姉ちゃんを放せ!」
声がしたと思うと、先程の男の子が山賊のナイフを持つ手に噛み付いた。
「このガキ!」
山賊は予想だにしなかった事態に動揺し、拘束する力に隙ができるとナンナは山賊の腹に肘てつを食らわせて脇差しから銀の剣を抜く、山賊は噛み付いてきた子供に矛先を向けると斧を振り上げた。ナンナはとっさに山賊の間合いに入ると、渾身の力で防いだ。
「力のない弱いものを切り付けるような者に私は屈しません!」
凛と言い放ったナンナはその場にいた敵味方の視線を一瞬で独り占めにした。ナンナは美しい剣技で山賊を倒す。
「今のうちに、残りの山賊を倒そう」
アレスは安心したように呟くと残りの残党達を一人残らず倒すとナンナの傍に行く。
「俺の傍を離れるんじゃない」
アレスは少し怒ったように言い放ちながらナンナをきつく抱き締める。
「ちよっ!アレス」
「お前を失わなくて本当によかった」
聞いたこともない弱弱しい声にナンナは抵抗するのをやめ、アレスの腕の中でそっと目を閉じた。


それから、一年もしない間にアグストリアの反乱はアレス達の力よって治まった。アレスは荒れ果てた国々をまとめ、父エルトシャンが果たせなかったアグストリア統一を成し遂げ、アグストリア国王になった。王妃となったナンナはアレス王を献身的に支え、その存在は後に『アグストリアの白いバラ』と呼ばれることとなるのは、数年後の話。

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