牙狼

□曇りのち晴れ
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「ねぇねぇ、レオくん」
「はい!なんでしょう」
鋼牙の屋敷の応接間でカオルは暇をもてあまし魔導筆の手入れをしていたレオににじり寄った。
「カオルさん、ちょっと近いです」
レオは少し身を引くとカオルをソファに戻すように肩を軽く押した。
「鋼牙が帰ってくるまででいいから、絵のモデルになってくれない?」
にっこりと微笑むカオルに何も言えずレオは頷いた。
「うーん、レオくんもう少し自然な表情でお願い」
「これでも、普通にしているつもりなんですが」
レオは、言葉とは裏腹に表情が引きつっている。
「もう、仕方ないなあ。リラックス、リラックス」
カオルは、レオに近づくといきなりくすぐりだした。
「カオルさん、やめて下さい!」
レオはあまりにも、くすぐったいのかカオルの手から逃げようと暴れるとその足に引っ掛かりカオルはレオの胸に飛び込む形で転んでしまった。
「きゃっ!」
レオは床にカオルが落ちるのを防ぐためにとっさに抱き締める。
「大丈夫ですか?カオルさん」
「うん、大丈夫レオくん」
カオルはレオの腕の中から起き上がると人の気配を感じ後ろを振り向いた。
「ずいぶんと、楽しそうだな」
いつもにまして仏帳面で鋼牙が立っていた。
《おじょうちゃんも隅にいけないなぁ。鋼牙が留守中に浮気とは》
「なっ!そんなわけないじゃない。ザルバ何言ってるの」
カオルは、急いでレオから離れる。鋼牙はポーカーフェイスのように見えるが目が怒っているのがばればれでカオルは言葉を発することができない。レオも鋼牙のただならぬ殺気を感じ、急いで帰り支度をする。
「あの、俺は魔導具の修理がありますので失礼します」
いたたまれなくなったレオは礼儀正しく頭を下げると逃げるように足早に屋敷を後にした。


「鋼牙様、今日は随分お早いお帰りでございますね」
不穏な空気を壊すように穏やかな口調でゴンザは言うと上着を受け取る。
「ああ」
《オブジェの浄化をいつもより、やたら念入りにやっていたな。久しぶりに休みの誰かさんと過ごしたいからだろうけどな》
「ザルバ!」
「それでは、私は早めの夕食の準備をいたしますので、鋼牙様とカオル様はそれまでゆっくりお過ごし下さい」
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