Intangible proof
□エピローグ
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嵐が来た。
重苦しい暗雲が西の果てから東の果てへ押し寄せる。
そこから幾筋の雨が大地へ襲い掛かり、叩き付け弾け、土を草を震わせる。
唸り声。 空が唸っている。
「…恐れ入った。その程度の実力でこの我輩に杖を向けるとは…。」
「―っ……」
荒れ狂う世界の中に男が2人。
黒い男が残酷なほどの余裕で泥の中に膝を付く眼鏡の青年を腕組みして見下ろしている。
青年は乱れる息を地面に向かって吐きつけ、そして男の方も隠した息の荒げようはしかし余裕とは言い難い。
「僕は……僕は、ここで諦めるわけにはいかないんだ!!」
青年の杖を持つ手がぬかるみをバシャンと押し返し、彼はその勢いを借りてユラリと立ち上がった。
「…では教えてやろう。今のお前では“無理”だということを。」
「僕は…僕は…!」
空が唸る。怒りを顕にしている。
「―2人ともやめて!!」
目も眩む一撃が轟き、
「もうやめて―」
女の声が二人に届くことはなかった。