Intangible proof
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長テーブルを挟んであちら側にはスーツを着た父と淑やかなワンピースを着た母、その間に娘を挟んで3人。
こちら側には新調したローブを着た父と手持ちで一番上等なワンピースを着た母、その間に息子を挟んでまたその両隣には以下省略の同じ様な顔をした同じ髪色の8人と幼児が1人。
「お父様は省のご高官、お母様はなんでも“こちら”の大事件の際のご活躍で勲章を頂かれたそうで。」
娘の隣でその父親が目を輝かせて目の前に座る赤毛の夫妻に賛美を送った。
「そんな高官だなんて、今はただ人手が足りないだけで…」
「そうですよ、そんな大層な物じゃ無いんですよ!」
「まぁウィーズリーさん、ご謙遜なさらないでください。こんな素敵なご家族、私達のような平凡な家の娘なんて勿体ないですわ。」
謙遜かと言えば確かにご婦人の仰る通りなのだが、改めてそう言われると身のやり場の無いウィーズリー夫妻は揃ってテーブルの上へ目線を泳がせた。
それを赤毛の五男がニヤニヤとした顔で眺めている。
「この娘の祖父母も息子さんを大層気に入ってしまいまして、先週はすまなかったねロナウド君。」
「いやですよ、家の不躾な子なんて…」
「お母様ったらまたそんな。息子さん達や娘さんの綺麗な歯を見れば解りますわ、小さい頃からきちんとお母様の手が届いてらっしゃる。」
「「………。」」
全くもって頭が上がらないウィーズリー夫妻。こちらこそお宅の出来た娘さんに家の息子がすいませんと、本当ならそう謝罪したいくらいなのに。
それを赤毛の次男と三男がソワソワとした顔で眺めている。
「う、家の家族の方こそ、ハーマイオニーにはとってもお世話になって!特に私と兄さんは…ね、兄さん?」
「―へ、あぁそうそう!ハーマイオニーはホント頼りになって、僕なんか全然ダメ…」
なんとか両親を和ませようとしたジニーのパスで見事なボケツを掘ったロンは、その妹にこれでもかと睨まれた。
「それにしても可愛いお子さんだ。お名前は何て言うんだいジニーさん。」
「はい、ジェームスと言います。一才と半年になります。」
「まあ、羨ましいわ!私たちも早く孫の顔が見たいわ。ね、あなた。」
「あぁ!」
真っ赤な顔をしたハーマイオニーを挟んでグレンジャー夫妻は嬉しそうに顔を見合わせている。良い人達なのだ。良い人達だからこそ、ウィーズリー夫妻は更に恐縮して身を縮こませた。
赤毛の長男はここに妻が居れば少しは場も和らいだのに、と天井を眺めている。
そして不意に訪れる沈黙。
何かこれと言った話題も浮かばず、ロンに関してはこれ以上ヘタはするまいと頑なに口をつぐんで居るが、君はそれで良い。
もはやジニーもお手上げである。あぁ、何かこの現状を打開する手は無いものか。
そして、救世主は突然現れた。
両者の間に流れるその気まずい空気を切り裂く様に、
ドカン、ガシャンと騒々しい音と共に、
テーブルの上へ。
「―ッイタタ…今度はここにテーブル置いたの?」
突然の乱入者にその場に居た全員の息が止まった。動きも止まった。いろいろ止まった。
マグルの写真のごときその光景の中で1人だけが飄々と椅子から立ち上がり、テーブルの上に現れた人物の肩を愉快そうにチョンと小突いた。
「よぅハリー。」
「やあ、久しぶりジョージ。」