#3 沖 一利
□西浦野球部的天気予報
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梅雨入りしても、毎日雨が降るとは限らない。
だから野球部の面々の表情も、このところなんとなく曇りがちだった。
「西広、おはよ」
朝練前、沖は部室前で、クラスメイトであり部活仲間でもある西広に、声をかけた。
「はよ」
西広はこちらを振り返る。
「今日は雨降るらしいね〜。やだなぁ」
沖は最近のお決まりの天気に関する台詞を何気なく西広へ投げる。
しかし、西広は沖をじっと見つめたまま、数秒固まった。
「えと…ナニ?」
固まるというよりは思案しているようにな西広の行動に、ヘンな事言ったかな、と居心地の悪い面持で対峙する沖。
「今日は降らないよ」
西広は沖に構わずニコリと笑顔を見せながら、部室のドアを開ける。
「え、天気予報じゃ降るって…」
やけに自信満々西広の後を追って、沖は部室のドアをくぐった。
「ちーす、西広、沖」
部室内ではすでに着替えを始めている部員たちが、口々に挨拶をしてくる。
その中の一人、田島が身を乗り出すようにして、西広に尋ねた。
「西広!今日はどう!?」
「うん、大丈夫だと思うよ」
「いよっしゃー!」と両腕を振り上げる田島。
狭い部室であったため、
その両隣にいた水谷と巣山がぎょっとして身を避けた。
「西広が田島と交信してる…」
栄口が珍しいものでも見たかのように、花井に小さくつぶやいた。
「交信じゃなくて、天気予報の結果。だいたい当たるから、田島に聞かれるんだ」
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