あんけーとっ!
□起きたら
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人の気配がして私は目を開けた。
「ぁ、」
『…平ちゃん…。』
「…起きたか?」
『うん。』
起きようとした私を平ちゃんが手伝ってくれる。
『ありがとう。』
「いや…。」
『どうしたの?』
「…悪かったな…。」
下を向いて言う平ちゃん。
『何が?』
「処分…。どうにかしたかったんなだけど…。」
『あぁ、いいよ。気にしないで?私、平ちゃんに会えただけで幸せだから。』
「…。」
『まぁ、明日まであるんだからそれまで楽しみますよ。』
縛られた両手を上げ、伸びをする。
「あ、外してやるから腕だせよ。」
『え?いいの?』
「ああ。土方さんが明日までは自由にしとけって。」
平ちゃんは丁寧に優しく外してくれる。腕の次は足。
「それにしても変な着物だな、それ。袴にしては短いし…。」
『あぁ、これ?私達の時代では制服って言うの。この短いのはスカート。』
「すかーと?聞いたことないな…。」
首を傾げ、恐る恐るスカートに触れる平ちゃん。その姿が可愛くて平ちゃんの頭を撫でた。そうすれば彼は不思議そうにこちらを見る。
『このスカートってね、長さが変えられるんだよ?』
「そうなのか!?」
ばっと顔を上げる平ちゃん。だから、私は立って今まで折っていたスカートを伸ばす。
「おおお!」
『んで、こうすれば…』
スカートを折れるところまで折る。さっきより大分短くなったスカート。それを見た平ちゃんが顔を真っ赤にした。
「お、お前!そ、そんなに脚出してはず、はずかしくないのかよ!」
『…別に。あっちの世界だと普通だよ。』
「い、いいから!もういいから長くしろよ!」
『平ちゃん顔真っ赤。』
「う、煩い!」
そう言うと平ちゃんはそっぽを向く。私は仕方なく元の長さに戻す。
「お楽しみのところ失礼するよ。」
『あ、総司くん。』
「総司!」
「ゆずはちゃん、ちょっといいかな。」
『うん。』
「平助も。」
「あ、うん。」
私と平ちゃんは並んで総司くんについて行った。着いたところは広間。
中に入れば幹部の皆が並んでいた。
「連れてきましたよ。」
そう言うと総司くんは一くんの隣に座る。平ちゃんも左之さんの隣に座った。
…えと…、私は何処に座ればいいのでしょうか…。
「そこに座れ。」
土方さんの目が目の前の少し離れたところに座れと言っている。私は指示通りに前に座った。
「…正式に時刻を言う。」
『あ、はい。』
「…明日の朝、日が昇ったら行う。」
『あ、意外と早いんですね。まぁ、いいですけど。』
私はそのままぐるりと周りを見る。皆、私の視線から逃げるように下を浮いていた。
『あの、一ついいですか。』
「…なんだ。」
『その悲しそうな目で見ないでください。私、別に最初から此処に住めるとは思ってなかったですし、それに皆に会えて良かったですし。人生で今、一番うれしいですから。』
「…。」
「ゆずは!」
いきなり平ちゃんが立ちあがる。少し驚く。
『はい。』
「お前、何で抵抗しないんだよ!何で、そんなに簡単に物事あきらめるんだよ!」
『誰も信用してないから。何にも期待なんてしてないから。』
その言葉で平ちゃんは黙った。
((人は信じても結局、裏切る。期待なんかしたって自分の思い通りにはいかない。
…私はそれをいやと言うほど知っているから。))
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