ナミダノアト


□No.12
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「うッぎゃあああ!何や、アレェエ!!
どーやってあんなデカイの倒すんや!この世の終わりか!」

「廉造、五月蝿い!少しは黙ってられへんのか!」


金剛深山に入って直ぐに見えた不浄王。そのでかさは近づくにつれてその巨大にまた驚かされる。


「あれが不浄王…。」

「まるで要塞やな…。」


ずぁぁぁぁと不浄王からは変な音がして気持ちが悪い。


「よし、この辺から捜す。」

「はい。」

「うん。」

「へ〜い。」

「「了解!」」


捜すっていうのは和尚の事。蝮姉たちが最後に見たという場所にはいなかったらしい。和尚を探し出して手紙について詳しく聞く。それがシュラに言われた事だと竜が言っていた。


「和尚ー!」


声をかけるけど返事はない。


「!ちょっとあれ…和尚さんじゃない!?」


出雲の言葉で指差す方向をみる。…和尚!


「和尚!」


駆け寄って気付く。…血だらけ。


「そ、そんな…。」

「お、和尚…。」


ふらっと倒れそうになったけど、隣にいた犁耶が支えてくれた。


「あ、りがと…。」

「無理するな。…離れるか?」

「ううん…。いい。」


その時、ボッと和尚が炎に包まれ、何が出てくる。…小さな…鳥…?


「伽僂羅…。」

「え…?」


その鳥は和尚と個人的な契約をしていると言った。


「ゲホッ」

「和尚!」


竜士が叫ぶ。うちは近寄ってすぐ横に座り込む。


「和尚!大丈夫!?」

「…ああ。…みんな、何でこないなとこに…。」

「助けに来たんやよ!」

「何ちゅう無茶を…ぐ、」


和尚は苦しそうに言葉を吐き出す。


「傷は癒したが、動くのはまだ無理だ達磨。」


伽僂羅が言うと和尚が伽僂羅に視線を移す。


「伽僂羅か?…えらいちっこくなってまぁ…。私もお前も死んだか思たわ。」

「我は不死鳥の名も戴く者。幾度も再生する。それにお前とはまだ"劫波焔"の契約が残っているからな。死なせはせぬよ。」


…不死鳥…。
和尚が燐に気づいた。


「燐くん!
手紙を…読んできてくれたんか。」

「俺も読んだ。」


竜士の言葉に驚く和尚。
ここにいる全員が事情を理解している事を伝えて、竜士は秘密を残らず話してもらうと言う。和尚は…渋々、話しはじめた。
不浄王が一城ほどの大きさにり、胞子嚢を作ること。
その胞子嚢が熟し、破裂すると瘴気を撒き散らすこと。
不浄王の唯一の急所とおぼしき心臓が胞子嚢の中にあること。
心臓を打つには一回破裂させなくちゃいけないこと。
劫波焔のこと…。


「劫波焔は人の生きた年月を焔(ほのお)にかえる術。一生の終わりに放出し、一切を焼きつくす、大火焔…。」


和尚は…静かに言った。


「しかし、十五年ほど蓄えた焔を不浄王の足を止めるのに使ってしもた。残る焔はあと僅か…。
私はこの残りの劫波焔で胞子嚢が破裂してめ瘴気が外ふ漏れんよう、結界を張る。」


和尚は伽僂羅を握り潰して言った。


「燐くん、君にはその降魔剣で不浄王の心臓を焚滅して欲しい。」


和尚の言葉に燐は


「…すんません、俺…。」


謝った。
…そうだよ。さすがに、命に関わるもん…。…燐には…生きて欲しい…。
でも、


「いや…俺、今、剣抜けなくて…。」


謝った理由は………それだった……。
思わず皆がえ?、と声を漏らす。


「剣て抜ける抜けないとかそんな事あるんか!?」

「いや…どうも精神的な問題らしくて」


うちが言えば燐が辛そうに言った。
それを聞いた和尚は自分一人でなんとかしようとする。


「無理だよ、和尚!」


自分の命より皆を守ろうと必死な和尚。


「おや?そういえばお前は達磨の息子か。なら、丁度いい。血が繋がっている者へならば劫波焔を移すことが出来る。」

「!」

「あかん!」


和尚が叫んだ。必死に…。


「それだけはあかん…!まだ子供や!竜士は絶対にまきこませへん!
こんな柵は当代で断つて私はこの命を懸けて誓うたんや!それだけは…。」


和尚の言葉に…一瞬、しずかになった。
誰も話さない。…和尚の必死さが伝わったから…。









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