ナミダノアト
□No.4
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苦しい…!
痛い…!
暗い…。
痛い…。
寒い…。
いたい…。
廉造…。
廉造…!
「…ゆ…!ゆ…か…!ゆりか…!」
廉造…?廉造…!廉造!
「…れんぞ…!」
急に視界が明るくなる。
あぁ、うちが自分で目を開けたのか…。
あれ…?なんで、みんな…泣いてるの…?
「あ、は?なんで、みんな…泣いて…るの…?」
「あほぅ!何やっとんねん!」
「竜士…うるさいよ…。ってか、ひげ…剃り途中…?」
「笑いごとあらへん!」
珍しいね…。竜二がそんなへましてるの…。次に視界に入ったのはメフィストだった。
「うっかりしてました。まさか薄くなった結界を狙って悪魔が入ってくるなんて…。」
「メフィストの…どじ…。」
「あなただけには言われたくないですよ。彼を守るために自分を犠牲にするなんて…。あなたは正真正銘のばかですか?」
「…か、れ…?」
メフィストの視線を追えば、そこには俯いていた廉造が目に入った。ぽつぽつと涙が落ちている。
「れんぞ…?なに、泣いてるの…?」
「…お、まえが…!馬鹿なことするからや…!」
「なに、言っとんのや…。廉造が怪我しいへんで良かったわ。」
その言葉に廉造が涙をこぼす。
だから…泣かないで…?
うちは何ともないから…。
だから…。
うちはそのまま目を閉じた…。
「ゆりか!?」
「…。大丈夫です…。眠っただけです。」
メフィストの言葉にそこにいた者は安堵の息を吐いた。
「…俺の…せいや…。…俺の…!」
「お前のせいちゃう!」
竜士が廉造の肩を抱く。廉造はただ首を横に振るだけだ。竜二はなにも言えずに彼の肩を抱くことしかできなかった…。
◇◆
それから、うちが目を覚ましたのはそれから三日後の事だった。目を開けると金髪が目に入った。
「…金兄?」
「おぉ!ゆりか!目ぇ覚ましたか!三日ぶりの起床はどんなもんじゃ?」
「え!?うち、そない寝てたんか!?」
「ほじゃ。坊と子猫丸と廉造なんて寝なずにつきっきりだったんやで?」
「…そうなんや…。ごめん…。」
「なん。ゆりかが気にすることないで。」
「でも…。」
「悪いんわ俺や。悪魔に気づけへんかったのは事実やからな。」
金兄はすまなそうに頭を下げる。でも、うちはそんな事してほしいわけじゃなくて。というか、悪い人なんていないんじゃないかって思うわけで…。
金兄の顔を上げさせていると、ふすまが開いた。入ってきたのは竜士と子猫さんと廉造が入ってきた。三人はうちの顔を見て幽霊を見たかのような反応をする。その三人の反応をみて苦笑いしてしまう。
「やぁ。」
片手をあげて笑いかければ竜士が両手をプルプルと震わす。
あぁ…やばい…。絶対おこr
「なにやっとんねん、お前!」
やっぱり…ね。長年一緒にいればその人の癖くらい分かる。竜士の場合、キレるとき両手が震える。そのあとに…。
がんっ!
「いたっ!」
頭にげんこつ…。これも、ワンパターン…。
「ちょ、竜士!怪我人相手に何すんねや!」
「そない怒る元気あるんやったら問題ないやろ!」
「三日間寝てたから元気なだけや!」
「…ゆりか。」
竜士と口げんかしてれば、廉造がうちの名前を呼ぶ。その顔は自己嫌悪に歪んでいる。うちは気づかいふりをして聞く。
「なんや?」
「…すまん。」
「なんや、廉造が悪い訳やないやろ?せやから、謝る必要なんてない。」
「…でも、おれがちゃんt、」
「廉造。」
それ以上は聞きたくないという意味を込めて言葉をさえぎる。廉造はそのまま俯く。
「志摩さん。みんな無事やったんやからいいじゃないですか。」
「そうや。子猫さんの言う通りや。」
子猫さんの言葉を肯定すれば廉造は黙って出て行ってしまった。
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