ナミダノアト


□No.7
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暇や。」


只今、絶賛暇を持て余し中にございます。うちは理事長室のソファーにねっころがりあんみつを抱きしめる。誰かが来るかもしれない?んなの知らん!
つか、初任務?何それ。聞いてないんですけどぉ!?あれだよね、これってイジメだと思っていいんだよね。さっき暇すぎたから竜士に電話しましたよ、はい。そしたら何!?"任務中やから電話切るで"。ぶつ。はい、終わり。ざっけんじゃねぇよ!!!廉造も子猫さんもみーんな初任務!!!うちは!?うち!!!なんも聞いてないんですけど!!!うちも任務したい!


「雪男の馬鹿野郎。」

「ゆりかに馬鹿野郎と言われる覚えがないんだけど。」

「うおっ!?ゆ、雪男!?」

「何をそんなにいらいらしてるの。」

「雪男が悪いんやからね!みんなには初任務行かせたんにうちには行かせてくれへんなんて!」

「理事長が行かせるなって言ったんだよ。」

「メフィスト殺す。」

「でも、流石にそれはゆりかを特別扱いしすぎだし任務をしないことにははじまらないからね。理事長を説得して、初任務を持ってきたんだよ。」

「ほんまか!?やったぁ!」


うちはソファーから飛び起きて、雪男が持っていた紙を取る。うちの上に乗ってたあんみつは転がり落ちてびっくりしている。


「…何やこれ。」

「?任務だけど。」

「いやいや、こない事したない。」

「任務だから。」

「え、だって何やこれ。雑用やないの。」

「仕方ないでしょ。まだ候補生なんだから。」


雪男がくいと眼鏡を押し上げるのを見ながらうちはため息をはいた。…こんなことなら任務なんてしなくていいや。


「それで今から行くから制服に着替えて。」

「…だる。」

「何か言った?」


ゆ、雪男くん…。目がわ、笑ってませんけど…。
雪男の笑っていない笑顔にびくびくとしながら制服に着替えるために自分の部屋に行った。


「…山のゴミ拾いって…。何ですか、ほんま…。一般人でも出来るわ。」


これで何回目か分からないため息をつくとうちは着替えに取り掛かる。


「あ、あんみつも連れて行こう。」


すぐに着替え終わってしまう。もう少し時間をかけてやればよかった。


「終わった?」


ノックとともに雪男の声が聞こえる。うちはうーんと曖昧な返事をする。すると雪男が入ってきた。


「遅い。」

「行きたない。」

「…兄さんみたいな事言わないでよ。ほら、行くよ。」


雪男に腕を引っ張られながら、無限の鍵をさしたドアから目的地に向かう。
…靴。あ、雪男が持ってた。ドアを開ければそこは山、山、山ばかり。
…え?まさかこの山全てとか言う?


「遅くなりました。」


雪男がうちの腕を引きながら、くそイケメンなお兄さんに話しかける。雪男に声をかけられたイケメンさんは人の良さそうな笑みを浮かべ、頭を下げる。


「いえ。こちらこそすみません。」

「?」


雪男が腕を離し、靴を渡す。うちは靴を受け取り、履きながらイケメンさんを見る。


「掃除はもう終わってしまったんです。」

「そうですか…。」

「それで、代わりといっては何ですが別の任務を頼んでもよろしいですか?」

「掃除以外ならなんでもやりますえ!」


うちがはいはい、と手を上げればイケメンさんは苦笑いする。


「元気がいいですね。」

「あ、駒澤さん。挨拶を。」

「はーい。駒澤ゆりか言います。よろしゅう。」

「小崎 逞(こざき たくま)です。」

「それで新しい任務とは…。」

「…少し、危険なんです。」

「そないこと気にせんよ。」

「そうですか。なら、ついて来て下さい。」


うちは逞さんの後ろを歩く。雪男が小さい声で耳打ちしてきた。


「理事長にゆりかには危険な仕事をさせるなって言われてるんだけど。」

「メフィストにばれなければ大丈夫や。」


うちはにこっと笑って、歩く。






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