平助×千鶴
□エピソード五『風邪と簪と』
1ページ/4ページ
「けほっ・・・」
「大丈夫か?千鶴」
「うん、平気だよ」
布団から顔を出す千鶴の顔は、すごく赤くて汗も伝っていた。
額に手をあてると熱が伝わる。
千鶴は口に手をあて、せきを何度も繰り返す。
そう、千鶴は風邪にかかってしまったのだ。
桶の手ぬぐいを絞ってから千鶴の額へ乗せる。
「今日はゆっくり休めな」
「うん、ありがとう」
千鶴は言いながら微笑んだ。
オレも同じように微笑んでから千鶴の手を握った。
「眠るまで繋いでてやるから。安心しろ。 ホラ、おやすみ」
「ふふ、・・・・おやすみ平助君」
笑いながら千鶴はゆっくり瞳を閉じた。
しばらくして、規則正しい寝息が聞こえはじめた。
寝顔、・・・・可愛い。
そっとあいてる方の手で頬を撫でる。
「はやく良くなって、美味い飯作ってくれな。――千鶴」
そう呟いてから、オレは静かに口付けを落とした。