沢田綱吉は小さい頃からダメだった。
走っては転び、歩いても転び、犬に追いかけられては転び、家の中でも転んだ。
転び過ぎて頭でも打ったのか、要領も大変に悪かった。両親はそれも含め全て可愛らしいと愛情をたっぷり注いでくれたが、周りはみんな彼を「ダメツナ」と呼んだ。綱吉もいつしか自分を諦めるようになった。

綱吉には4人の幼なじみがいた。一つ年上の雲雀恭弥、笹川了平、同い年の山本武、了平の妹の京子だ。
みんな家が近く、幼稚園も小学校もそして現在の中学校もずっと一緒だった。

彼らは周りが綱吉の事をどんなに「ダメツナ」と呼びバカにしようとも決して彼を蔑んだりはしなかった。むしろぶきっちょながらに周りの人間を優しく、暖かく、認め包み込む綱吉がみんな大好きだった。


綱吉自身も、そんな彼等が大好きで、みんなと一緒にいる時間が大好きだった。彼等に大事にされていることも分かっていた。
だから自分も彼等を大事に、大切に思っていた。自分はダメツナだけど、彼等を思う気持ちは誰にも負けないと思っている。

綱吉たちの関係は年月を経てもあまり変わることはなかった。
ただ了平の「さわだ」という平仮名呼びが「沢田」へと成長し、綱吉は了平を「お兄ちゃん」から「お兄さん」へ、雲雀を「恭ちゃん」から「雲雀さん」と呼ぶようになったくらいだった。

そして綱吉はずっと、京子に淡い恋心を抱いていた。彼女といると心がポカポカした。そして京子も自分の事を好いているのが分かった。残念なのは京子の抱く、好き、という感情が綱吉が京子に抱くそれとは違うらしいことだった。
京子は綱吉を、家族の様に思っているらしい。了平の様な、もう一人の兄として綱吉を見ている。思春期を迎えた綱吉にとっては少しもどかしかったが、それでも京子と一緒にいる時間がとても幸せだったので、この関係はそのままでいいと思っていた。



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