艶かしい音色を奏で蝶の様に舞う


その行為は人にとって何を示すのか




頭の隅にそんな疑問を浮かべながらもそんなこと今の自分にとってはどうでもいい事で
ただ彼女を抱いていたくて 離れたくなくて
吸い付いては離れない甘美な感覚に総司は息を吐いては昂る自分を抑え込んだ
その下で僅かではあるが自らゆらゆらと腰を揺らし悲鳴にも似た声を洩らす彼女
時折逃げ腰になる彼女のそれを掴んで更なる奥へと攻め立てる

空気を求めて開けられたその唇を食らい付く様に塞いで
苦し気な色を見せるも自分に差し出された舌に愛しさが溢れてたまらない




ああ 壊してしまいそうだ


壊して分からないほどぐちゃぐちゃにしまいそうだ




自らの意思に関係なく発せられてしまう声を抑えようと必死に唇を押しあてる姿は欲情的でいて且つ艶かしい
そのか細い彼女の腕を掴んで引き寄せて繋がりを深くする






ぐちゃりとした音がもっと奥から響いた




短く息を呑む様な小さく漏れた声はやはり悲鳴にも似ている
襖の閉まり切っていない隙間から差し込む月明かりしか照らすもののない暗闇の中で










壊してしまいそうだ







愛しくて愛しくて



狂おしい









「千鶴 好きだよ」



さ迷う様に伸ばされた手を合わせて
瞳からこぼれそうな雫を唇で拭い耳元で囁く様に伝えた僕の言葉にきゅっと華が締まった
好き
取り立てて甘い言葉でもないこの言葉に彼女は弱い

突如狭まった華に昇りつめそうになるのを深く息を吐いてやりすごす




「―っは、くっ



――千鶴、は?僕がすき?」





額に汗を滲まして強く目をつむってなんとか顔を縦に振る仕草は可愛げがまだ残っていて何だかなぶりたくなる





「だめだよ千鶴 ちゃんと
口で言って」



繋がりのすぐ上にある花弁に包まれた芽に指をのばし大きく脈打つ可愛らしいそこを燻る

途端に浮かしてその快感から逃れようとする彼女の腰を逃がすまいと引き寄せる




「ねえ ちゃんと口で
ねえ

ねえ 千鶴」




















「すき 総司さ、ん



すき」






分かってた答えだけど

いつももらってた答えだけど


欲しかったその言葉に

やっとくれたその言葉に



ドクンと千鶴の中で自分が大きくなるのを感じた









それからは酷く彼女を抱いた
壊れる程に
千鶴の脚を肩にかけなぶりながら幾度も出入りを繰り返す
一度高みを超えて戸惑う彼女を何度もそこへと無理に引き出して導いて 声が枯れても止める事なく
そうした揺れる視界の中で 断続的に続く息遣いに 自分がまるで獣の様だと感じた




余裕のない君に飢えた
獣のような






「っは――、離れないで、千、づる」







離れないで
離さないで
離したくない




嗚呼











艶かしい音色を奏で蝶の様に舞う
その行為は人にとって何を示すのか

頭の隅にそんな疑問を再び浮かべながらやはりそんなこと今の自分にとってはどうでもいい事で


ただ彼女が傍にいれば 彼女さえいてくれれば


他に何も 望まない

ぽたりと頬をつって滴り落ちた僕の汗が
彼女の胸に弾けて




溶けた



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