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□なんでもないただの一日
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大きく開け放たれた窓からは、気持ちのよい風が吹いてくる。

青い突き抜けるような空には、飛行機雲が真っ直ぐに走っている。まさに秋晴れとはこのことだ。

こんな日に外に出かけてピクニックなんてしたら気持ちいいだろうなぁ!

お弁当の中身はサンドイッチでしょ?はさむのはエッグサラダに、ミミウサギの照り焼きなんかもいいなあ。

なんてことを考えてたら、わたしの頭は原稿を離れてぽかんと空を見上げていた。

はっ!わたしったらさっきお昼ごはん食べたばっかりなのに、また食べ物のこと考えてる!これじゃルーミィのこと食いしん坊だなんて言えないなあ。

でも、こう原稿が進まないとついついほかのこと考えちゃうのよね。


わたしは、久しぶりに机に向かって原稿を書いていた。このところクエスト続きだったから、すっかり原稿が溜まってしまっていたのだ。

わたしの原稿を買い取ってくれている印刷屋さんからは、雑誌に載せるためには明日までには持ってきてほしい、なんて言われてるし、つまりはかーなーり余裕がない。

焦っているの!

でも、こう焦れば焦るほど良い言葉は浮かんでこないもの。

わたし達の冒険譚を文章にしているだけで、難しくないだろうなんてたまに言われたりする事もあるけど、そんなに簡単なものじゃないのよね。

体験したことを書き写すだけなら、それはただの記録になっちゃう。それを小説として生まれ変わらせるには、意外と努力と根気が必要なんだ。



途中まで埋まった原稿を前に、鉛筆をくわえてうーんうーんとうなっていると、ふと頭の中に歌が流れてきた。

ほんとに全くなんの脈絡もなく!

これも原稿をしている時にたまにある、現実逃避現象の一つだ。

しかもその歌はどうしても途中で止まってしまうのだ。その先を思い出せないの!

原稿に集中しようと思うのに、その歌が気になって気になって。こうなっちゃうともうダメ。

この歌を全部思い出さないと、原稿の続きは書けない!

わたしは開き直って、頭を切り替え歌に集中することにした。原稿はまだ半分近く残ってるのに、何やってんだーってわかってるんだけどね…。

こういうのってふとしたきっかけがあればすぐに思い出すものなんだけど。なぜかどうやっても思い出せない。

歌いだしは『素晴らしい朝の〜』であってると思うんだけど、その次のフレーズが出てこない。多分歌詞がわかればメロディも出てくると思うんだけど…。

わたしは一人で考えることを諦めた。つまり、みんなに聞いて回ろうと思ったのである。





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