short
□赤
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それは、本当に何気ない日常の中で落とされた一言だった。
日が落ちようとしている。
私の前には仲間達がいて、それぞれ大きな荷物を抱えながら笑いあっていた。
街の外には私達の現在の家である飛空艇が待っている。
坂の下には遠くに海が見えて、真っ赤な太陽が近づいて来ていた。
あたり一面赤く染まり、ぼんやりとああなんて綺麗なんだろうと思った。
それは旅の中でのありふれた日常だった。
だから。
振り返ると彼がいて。
ひどく穏やかな顔をしていた彼は私と目が合うと微笑んだ。
「好きだよ」
だから、私はこの非日常な言葉を受け止める事が出来なかった。