小説

□1話:出発
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「ハーイ、皆、おっはよーう!」
白衣をはためかせて颯爽と現れたアララギ博士は今日も楽しそうな笑顔をしている。
「おはようございます。」
チェレンは少しむっとしたような表情だがそれを気にする者はここにはいない。
チェレンは大概の時はそういう顔をしているのを知っているからだ。
「おはようございます。」
「おはようございまーす!!」
勿論あたしとベルもいる。
今日は待ちに待った旅立ちの日。
正直私は楽しみで眠れなかった。
それはベルも同じようで彼女の目の下にはうっすらと隈があるのがわかった。
「・・・お前達ちゃんと寝たのか?」
「ふふふ。楽しみで寝れなかったんでしょう。」
「・・・ちゃんと寝ました。」
「あ!ブラックちゃん嘘ついてる!その隈は何なのよう!」
何時も通りの光景。チェレンは皮肉屋さんで、ベルは騒がしくって・・・
これから皆バラバラで旅に出るなんて嘘みたい。
「さあ!皆、研究所の中に入って!」
「わーい!」
ベルが子供みたいにはしゃいで駆け寄る。
チェレンも何処か嬉しそうだ。
そうだよね。やっぱり皆も楽しみだったんだよね。

「ホントにいいんですか?」
「そのために呼んだのよ。」
目の前に3匹の小さい生き物がいる。
緑色のコ、朱色のコ、水色のコ。
「さあ、この子達のうち1匹ずつ選んで頂戴!」
「あ、じゃあじゃあ私、このコがいい!!」
ベルが迷わず朱色の子豚のような生き物を抱き上げた。
「その子はポカブ。炎タイプよ。きっとあなたの役に立ってくれるわ。」
抱き上げられたポカブはぽかんとベルを見つめている。
「なら僕はこっちの緑のやつを。」
チェレンが緑色のどこかプライドの高そうなツンと澄ました様な顔つきの生き物の前に立つ。
「その子はツタージャ。草タイプのポケモンよ。結構気難しい所もある子なんだけど・・・あなたとはお似合いみたいね。良かったわ。」
「・・・どういう意味ですか。」
キッと2人共アララギ博士を睨む。もう息ピッタリみたいだ。
「じゃあ、あたしは・・・」
目が合った。
時間が止まった。
声が震える。
「あたしは・・・」
あたしと水色の生き物はお互い震える手を伸ばし合って、
「この子ーーーーーーっっ!!!」
運命としか思えなかった。この子以外は無い。
アララギ博士が嬉しそうに、
「この子はミジュマル。水タイプ。いい子よ。」
今まで正直凄く不安だった。
この子となら何処まででも行ける!そんな気がする。
「さあ、皆パートナーは決まったわね!あと、コレも持って行きなさい!」
「・・・これは、」
「ライブキャスターと」
「ポケモン図鑑!!」
ポケモントレーナーを目指すものなら誰もが一度は夢見る『ポケモン図鑑』!!
感動で図鑑を持つ手が震えた。
「ホントにもらっていいんですか!?」
「ええ!ライブキャスターには君たち3人の番号とウチの研究所の番号を登録しておいたから困った事があれば掛けてきていいからね!」
「ありがとうございます!」
「よーし、じゃあ行っておいで!!」
「「「はい!行ってきます!!!」」」
そうして私達3人はカノコタウンから旅立った。
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