小説

□3話:前進
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調子に乗ってたのかなぁ。
野生のポケモンたちとのバトルでは全然負けなしだったから。
バトルでも勝てるって思い上がってたのかなぁ。
ポケモンセンターの天井がやけに高く感じる。
「ブラック。」
「うん?」
「僕は先に行くよ。ツタージャの回復も終わったし。
僕は次の町へ向かう。もっと強くなってみせる。」
その言葉は自分に言い聞かせて自分を奮い立たせるためだ。
「だから、ブラックもいつまでも落ち込んでちゃ駄目だ。」
そう言ってチェレンはポケモンセンターを出て行った。
近くに人の立つ気配がした。
「大丈夫か?」
「ホワイトくんまで。そんなに落ち込んでる風に見えるの?あたし。
ただ、あたしはまだまだ弱いから・・・もっと強くならなきゃなって。」
「大丈夫ならいいんだ。」
「ずっと思ってたんだけど、その子は何なの?」
ホワイトのポケモンは見たことが無い。
図鑑を翳しても反応が無いから気になってたんだ。
「ん?コイツか?」
ホワイトの足元で何が楽しいのか口に手を当ててずっとけらけら笑っている。
正直気になる。
「コイツはゲンガー。ゴーストタイプのポケモンだよ。
図鑑が反応しないのは君の図鑑がイッシュ図鑑だからだろう。」
「ってことはイッシュのポケモンじゃないんだ?」
「ああ。言ってなかったか?
俺はジョウト出身なんだけど、こっちに来る時に新しい気持ちで出発しようと思ってさ、
手持ちのポケモンたちみんな置いてきたんだよ。」
「え?でもその子は・・・」
「勝手についてきたんだ。」
「え?」
「自分のボールを勝手に鞄に入れて後ろからこっそりと。」
「へえ!?そ、そんなこともあるんだね・・・」
「ああ。ポケモンだって人と一緒。色々なヤツが居るんだよ。」
・・・ホワイトくんって
「結構お喋りなんだね。」
「なっ・・・!?」
見る見る内にホワイトの頬が桜色に染まっていく。
自然と笑みがこぼれた。何が可笑しいのかホワイトのゲンガーが腹を抱えて笑っている。
「ほっ、ほら、ミジュマルが帰ってきたぞ。」
全回復したミジュマルがカートに乗せられてジョーイさんに連れられて帰ってきた。
「お待たせしました。もう大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます!」
ジョーイさんがふふふ、と笑った。
え?何か笑われるようなことした?
相変わらずゲンガーは笑い転げてるけど。
「ああ、ごめんなさいね。治療してる時ずっとあなたに会いたがって寂しそうにしていたから。あなたのことが大好きなのね。」
ミジュマルがカートからジャンプして飛びついてきた。
やっぱり、あたしはこの子と一緒に強くなりたい!ううん。強くなるんだ!
「・・・もう大丈夫そうだな。」
小さい声でホワイトがそう呟いた。
からかってやろうと思ったけど、ホッとしたように優しく微笑むのを見てたらそんな気もなくなっちゃった。
優しい人なんだ。
「じゃあ、行くか。」
「うん!」
Nには負けちゃったけど、こんど会ったらあたしが勝つんだから!
気分新しく立ち上がったらさっきまで澱んでいたように感じていたポケモンセンターの空気がやけに軽く感じた。
後ろではジョーイさんとタブンネが手を振って見送ってくれいる。
横にはホワイトくんがいる。
腕の中にはミジュマルもいる。
なんだかとても心強くて元気が出た。
さあ、次の町へ向かおう!
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