電王

□届け!
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「うーん、そうだねぇ…良太郎は僕みたいに釣りが上手くないから、ストレートでいいんじゃないかな?」

「す、ストレート…」

「そ。好きですって一言言っちゃえばいいよ」

「わ、わかった…行ってくる…」

出掛けているキノを探しに、良太郎は街へと出掛けた



「おい亀、何してたんだ?」

「ん?恋の指導教官ってとこかな」

「なんだそりゃ?」






「ストレート…ストレート…」

ウラタロス教官に教わった、ただ一つの事を呪文のように繰り返し、商店街を歩く

『あ、良太郎!!』

するとキノが良太郎を見つけ、背後から声をかけた

「うぉぁあ!!?」

『え?あ、ちょ!!』

全く気づかなかった良太郎は驚き、いつもの鈍くささで受け身もとれず転倒

「いたた…」

『大丈夫?』

「あの…えと…だ、大丈夫…」

『良かった…』


恥ずかしい所をみられて焦るものの、キノを見つけることができた良太郎は、告白する覚悟を決めた


「キノちゃん!」

『ん?なに?』

「す…」

『す?』

「す…すす…



 少し土手でも散歩しようか…」

『うん、いいよー』

「…はぁ…」


ここが商店街という事に気づいたことと、まだ少し勇気がなかったため、よく行く土手に行くことにした




『んー…いい天気だし気持ちいいね!!』

「そ、そうだね」

『私好きだよ』

「えっ!?」

『すっきりした青空で散歩するの』

「あ…そ、そうなんだ」

『うん!誘ってくれてありがとね、良太郎!』



好きという台詞で頭がいっぱいの良太郎

人通りも少なく、落ち着ける場所に来れたので、今度こそ告白を試みる


「あ、あの、キノちゃん!!」

『なに?』

「さっき言おうとしたんだけど…あ、いや、さっき思ったんじゃなくて、ずっと前から思ってたことで…その…キノちゃんに僕から言いたいことがあって…一言なんだけど…僕そういうの分からなくて…えっと…」


『落ち着いて?で、何か私に言いたいことがあるってこと?』

「そ、そうなんだ…あのね…」

『うん?』




「………すきです…」




『………ごめん』


「え…」



『聞こえなかった!』


顔を俯かせ、あまりに小声だったために良太郎の声はキノには届かなかった

もう一度試みる



「あっ……好きですっ」


2人の上空をヘリコプターが3台通り過ぎた


『ごめん、また聞こえなかった!』


またもや試みる



「う……好きです!」

近くを大型バイクのグループが走り去った

『ごめん!もう一回!』

「えぇ!?」

連続して起こる不運に自分でも驚きを隠せない

だが、めげずに続ける良太郎


「……す、ぐぶぇっ!!」

子供が遊んでいたゴムボールが顔面に直撃

「ごめんなさーい!!」


『だ、大丈夫?』

「う、うん…あ、あのね!」

「あのぉー…すみません、駅はどちらにあるんでしょうか」


今度は道に迷ったおばあさんに声をかけられた


「あ…駅、ですか?駅は、この道を真っ直ぐ行って、左にある二つ目の下り坂を降りて、真っ直ぐ行くと、つきあたりにありますよ」


「どうもありがとうねぇ」

『お気をつけて』

良太郎の親切な案内に、おばあさんは喜んで歩き去った


「はぁ…」

『で、何だっけ?』

「あ、そうだった、あのね、僕…」

《おい!!良太郎!!イマジンの匂いがするぜ!!》

「えぇ!?こんなときに…!!」

『どうしたの?』

《体借りるぞ!》

「そ、そんなぁ!キノちゃん、ちょっとここで待ってて!」

『う、うん』


良太郎の体にモモタロスが憑依した


「…よぉキノ、久しぶりだなぁ」

『あ、モモ?』

独特な容姿と話し方でモモタロスだと分かる

「おう、ちょっくらイマジン倒してくらぁ」

『分かった!気をつけてね!』








「俺、参上!―――」



――――



『良太郎、遅いなぁ…―――』



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