鬼神さまと荒神さま

□下らない因縁ほど根は深い
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「あれはもう、千年くらい前の事なんだけど・・・『和漢親善競技大会』・・・
 まあ、オリンピックみたいな大会があって2人は大会の総合審判を務めてたんだ。」


「え?審判・・・?代表選手じゃなく?」


「まあ、そう決めたかったんだけど2人とも選手の域を超えてるから、他が着いていけなかったんだよ。
 両方とも人気があったから、大会の花として審判やってもらった方がイイって話になってね。
 中国代表、『乳白色組』の白澤君。日本代表、『赤黒組』の鬼灯君・・・」


「なんで、フツーに白組と黒組じゃないんですか・・・。」


「いや、其処は赤組、白組なんじゃ・・・。葬式の垂れ幕じゃないんだから。」


「さあ、地獄ぽくしたかったんじゃないのかな。兎に角、お互いの国が不公平が無いようにって審判を出した訳。
 二人とも、その前に何度か会っていたけど長期で一緒に仕事をするのはこれが初だったんだ。
 競技内容は大きく分けて武道系と・・・知恵比べや妖怪による術対決・・・。」


「へえ、楽しそう。」


「いいなあ、術対決めっちゃ見たい。」



子供のようにはしゃぐ桃太郎と叉羅に閻魔は父親の様な目を向ける。



「でも、ハッキリ言ってあの大会、女子たちは『鬼灯派対白澤派』でフィーバーしてた。選手そっちのけで。」



黒い冠に黒の狩衣と下に赤い差袴を纏った鬼灯。
羽の着いた装身具を頭に付け、白い唐装を纏った白澤。


そう説明すると、桃太郎も叉羅もそりゃ当たり前だという顔をする。



「それ、衣装気張りすぎでしょう。元が良いんだから衣装マジックで何倍もかっこよく見えるし。」


「うん・・・今思えばそうかもね。日本の織物とかアピールしようとしたら、中国もそれに乗ってきて・・・」


「黙ってれば2人ともイケメンだしねー。黙ってれば。」


「何故、二回も言う。」


「大事な事なので。」



憮然とした鬼灯はまた拗ねて叉羅の肩に顔を埋めた。



「それでも当時、両国で大人気だった諸葛孔明(234年没)対聖徳太子(632年没)の両選手による知恵比べは、みんな見入ってたよ。
 あれ、面白かったな〜。途中VIP席にいた策士・太公望や邪馬台国の女王、卑弥呼まで参加してきて・・・最後はドンチャン騒ぎだった。」


「何それ、超見たい!写メ取りたい!!その様子!」


「奇跡の偉人sコラボレーション・・・!!」


「いや、もっと凄いのは観客席の真ん中だったかな。楊貴妃と小野小町が並んで観戦してたんだ。」


「ええっ!や、やっぱ・・・美人でした!?」


「うん、でも昔の貴婦人だから頑なに扇で顔を隠してたけど。」


「試合見えてたんですか、ソレ。」


「小野小町が、鬼灯君にさり気なく和歌を贈ってたから見えていたとは思う。」


「モテモテですねー、鬼灯さん。」


「妬いてるんですか?」



ちょっと嬉しそうに聞いてきた鬼灯に叉羅は少しイラッとした。
何時まで人を抱きしめてるんだ、いい加減離してほしい。



「別に。本性知らない人は幸せだろうなって。」


「本性ってなんですか。私は叉羅さんと結婚して、叉羅さんとまぐわって、叉羅さんと子供を作りたいという、
 一途などこにでもいる男ですよ?」


「ア―アー、何も聞こえない!聞こえない!」


「いま、此処で実践して差し上げましょうか?大丈夫、ちゃんと大王と桃太郎さんは追い出して」


「閻魔様!もう、壮大なナニコレ珍百景はいいから、鬼灯さんと白澤さんの確執の理由を教えてください!!」



これ以上は身が持たないと叉羅は閻魔に先を促した。



「あ、うん。あれは大会の休憩時間に2人が休憩所で長椅子に座っててさあ。」



『・・・・・。』


『・・・・・。』



痛い位の沈黙に気まずくなったのか、白澤が鬼灯に切り出した。



『・・・・なあ、賭けをしないか?』


『何をですか?』



白澤が通路を指す。



『次、そこから出てくる婦人の乳まわりが二尺八寸(85p)以上か、以下か。
 勝った方が、夕御飯を奢るってことで。』


「普段の鬼灯君なら乗らなさそうな賭けなんだけど、気まずかったのは同じみたいでさ、」


『下らないことを考えますねえ、貴方は・・・。まぁ、いいですよ。』


『よし・・・じゃあ、僕は「以上」に賭ける。』


『では、私は「以下」で。』


丁度、その時に通路から人影が現れた。


『おっ、来た・・・。』


『いや、まず女人かどうか・・・。』



そうして姿を見せたのはスタッフの腕章を付けた、ふくよかなおじさんの様なおばさんの様な鬼。



((どっちだ・・・・!!??))


『おば・・・いや、おじさんでしょうか・・・。』


『・・・い、いや!でも、取りあえずあれは「以上」だろっ!?僕の勝ちだ!』



冷静に分析する鬼灯に対してワヤワヤと勝利宣言する白澤。
其処にもう一人、通りがかった。淑やかな佇まい。今度は一目で女性と解る。



『待って下さい。今出てきたお嬢さんは、おそらく「以下」ですよ?さっきの方が男なら賭けは私の勝ちです。』


『いや、認めないね!女人の可能性がある限りダメ!』


『あやふやな可能性は除外して明らかな方を基準とするのも大事です。貴方も審判でしょう?』


『な、何だよ・・・腹立つ言い方だなっ』



ムキになる白澤に鬼灯は呆れた目を向け、それが彼の怒りを煽った。


『ぐちゃぐちゃ屁理屈言いやがって、この倭人!賭けは僕の勝ちだ!!』


『ゴリ押しの上に負け惜しみですか、この漢人。賭けは私の勝ちです。』



正に一触即発の空気が2人を包んだ。



「ちょ・・、ちょっとちょっと!親善大会で喧嘩なんかしないでよ!」



閻魔が慌ててその間に入り込み、2人の頭を抑えた。



「2人ともこんなに似てるんだし、いい顔して、ホラ!笑って笑って!」



ピク!!


最後の言葉が鬼灯、白澤の怒りの沸点を限界まで持ち上げた。
直後、2人の猛攻が閻魔を襲う。
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