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□初
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「大雅ー。今日、前川さんの所行くんだけどあんたも行くー?」

母親がピアスをしながら聞いて来る。

水商売のような恰好をして恥ずかしくないのだろうか。

「ああ、行く」

高校1年の日向 大雅は席を立った。

「どうせ何言っても行かせるつもりなんだろ」

「ああ、そうね。分かってるじゃない。
今日は青木双子も来るみたいよ」

母も鏡から離れる。

「あら、あんたはその恰好で行けそうね。
じゃ、行くわよ」

母は大雅の服を見てそのまま鞄を持つ。

出掛けるつもりでは無かったが、何故かスーツを着ていた。

いつもスーツを着るようにしている。

さっきのように母に呼ばれなりなどに備えてだ。

母の突発的な呼び出しは今日だけでは無い。
頻繁によく連れ出される。

背の高い大雅は母の自慢らしくよく周りに紹介されるのだ。

その上腕を回すものだからよく恋人と間違えられるので出来るだけしっかりとした恰好をするようにしている。

母の恋人に見られるのは大雅も本望では無いが、母の男除けにもちょうどいいので父も何も言わない。

大雅も慣れていた。

「大雅ー。早くしてよー。
あ、鞄コレでいい?どう?」

母が高そうな手持ち鞄を見せる。

「いんじゃないかそれで。てかそれ懐かしいな」

その鞄には見覚えがある。

確か父が前の結婚記念日に母にプレゼントした物だ。

「そー。宗介さんがくれたやつ。 
オシャレで流石でしょ?やっぱりコレにしよー」

嬉しそうに母が鞄を撫でる。

見た目は遊び人な母だが父と母は長年の幼なじみの末に結婚とかなりの純情ぶりだ。

二人は今も一途で仲が良い。

父が母の男除けの為に大雅を連れて行かせるのもコレが理由だろう。

「じゃあ、行くか」

「あら、もう靴履いてるの?
私ヒールだわ。大雅ちょっと肩かして」

「早くしろよ」

「ちょっと少し屈んでよ。
肩に手を置けないじゃない」

母が大雅の肩を軽く叩く。

仕方なく気持ち前に屈んだ。






「お久しぶりですー」

家に着き、母が手を振りながら走る。

「はぁ、」

ため息を吐くと同時に肩を叩かれる。

「よ、来たのか」

前川 樹が後ろに立っていた。

「ああ、お前の母親見つけて走ってったぜ」

あんな高いヒールで良く走れると思う。

「そうか。じゃあ、俺達は俺達で行くか」

「そーだな」

樹に着いて行く。

和式の大きな家は樹の母の好みに建築されている。

その廊下を歩くと園芸品などが庭に沢山飾ってあった。

樹は角を曲がると襖を開けた。
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