番外編
□思わずときめいちゃった☆
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◆思わずときめいちゃった☆◆
その日、夏稀と平助は道場で稽古をしていた。
「っはー、やっぱ強ぇな!夏稀!」
「いや、平助のが強いよ。」
そう、夏稀がニコリと微笑めば顔を真っ赤に染める平助。
『待て待て。俺、何赤くなってんの!?夏稀は男なのに!』
平助の心の葛藤に気づかない夏稀は訝しげに平助を見る。
「そろそろ、休憩しよっか。平助。」
「お、おう。そうだな。あっちーなぁ。」
顔の熱を取るように手で顔を仰ぐ。
顔の熱以上に道場も暑いわけで、
「本当だよな。あついー。」
そういって胸元をくつろがせる夏稀。
その白い肌と、細い首と鎖骨を流れる汗に平助の目はくぎ付けになる。
「な、夏稀!隠せ!」
「へ?」
慌てる平助に対して意味を理解できてない夏稀。
「その、襟!」
言われて夏稀は、ああといった感じで、
「べつに、男同士だからいいじゃないか。」
生まれてこの方、女だが男として生きてきた夏稀にとって、何がいけないのかわからない。
「よくない!」
対して、夏稀が女とは知らず、男と思っている平助だが、たまに見せる夏稀の色っぽさに男とわかっていてもときめくわけで、複雑なのだ。
『俺は男が好きなわけじゃない!絶っっ対!』
こういう葛藤もよくある。
「えー…まったく、仕方ないなぁ。」
平助が何やら真剣な切羽詰まった顔をしていたので仕方なく、着物の襟を直す。
それにほっとした顔をする平助。