志士夢

□ツナガル、
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和宮。
此の七宝を君に贈る。私が君の生まれた地で手に入れたものだ。
何故この柄を選んだのか…、聡明な君なら既知であるかもしれないが、説明させてくれないか。…と言っても、店の女将の受け売りでしかないのだけれど。

七宝繋ぎ、という模様は『人と人の縁』を意味するのだそうで、その人の幸福の連鎖を願い贈ることも多いのだとか。
だから、私から君に贈りたい。
和宮、君がこの先、人の縁に恵まれますように。
その人々が皆、君を幸福に導いてくれますように。
その繋がりが、君の未来永劫続きますように。

勿論、一番深い縁を繋げる者は私であって欲しい。

だから、和宮。
これからも、私の傍に居てくれないだろうか。

君は京へ帰りたいと口にしていたが、今、世は思想が分裂している為に、皇女の君を狙う輩も少なくないようだ。
此の国の人々の想いがひとつになった時には、ふたりで。共に京へ参ろう。
私に出来るかは解らないが、是が非でも成し遂げたい。
だから、どうか。これからもずっと、私の傍に。


家茂










ツナガル、
(手も、心も。その繋がりを大切にしよう。人は支え合い生きていくものだから)


***
自作『promise』シリーズの番外として温めていた一文でしたが、思い切って投下。

徳川幕府第十四代将軍家茂より、妻 和宮親子内親王へ…
こんな文を認めていたら素敵だな…、という手紙文を。

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