志士夢

□あけていく、
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「──全く、おんしはまっこと可愛らしゅうて敵わん」


微睡みの中、優しい声を聞いた。
瞼が重くて開かない。つい先程、ふと傍らにあったこの人の温もりが離れていくような気配がして、咄嗟に掴んでしまった彼の袖を、気付かれないように放した。
不意に大きな手で髪を梳かれ、どきりと心臓が跳ねる。だけどそれはとても心地好くて、気だるい体がこの上ない程の幸福感に満たされていた。


「──…わしは生きる。何がなんでも。…おんしと共に…──」


静かに紡がれた、切なくて力強い声。そんな貴方の温もりが、堪らなく愛しい。


「──…さぁ、」


目を覚まして、と耳元で。
……貴方は気付いていたの?わたしが既に起きていたこと。


「──……」


明けていく、あけていく。
愛しい貴方と迎えた、初めての朝。





『あけていく、』



*
『幕末志士の恋愛事情/幕が開く(坂本龍馬)』番外。

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