志士夢

□貴方の膝で見る夢は、
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庭に落ちる雨音が耳に心地良い明け方のこと。
わたしは、小五郎さんの膝枕の上でぬくぬくと微睡んでいた。


「――…ふふ、愛らしいな」


優しいその声で、一層幸福感に満たされる。髪を梳く手が耳朶に触れ、身を捩りながら彼を見上げた。目が合えば微笑みを向け、軽いキスを頬に落としてくれる。
二人きりになると、この人はとてもとても優しくなるから、つい甘えてしまうのだ。
端から見たら飼い主と猫みたいな絵かもしれないな、と少しだけ可笑しくなる。


「……ん、何を笑ってるんだい?」


きょとんとする彼に緩く首を振って「何でもないです」と答えた。


「幸せだなぁ…って」


特に言葉にする必要はないのだけど、こうして伝えることで更にそう感じられるから不思議。
彼は一瞬驚いたように目を丸くさせて、すぐにあの綺麗な顔を穏やかに綻ばせた。


「君は本当、男を翻弄させるのが上手だね…。もう一度、愛したくなる……――」


まだ薄暗い部屋に甘い囁きを溶かし、二度目の夢にわたしを誘う。
二人の吐息を掻き消すように、降る雨は激しさを増していった…―――。





『貴方の膝で見る夢は、』



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blogで公開したSSでした。

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