志士夢

□きみしかしらない
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世間知らずだな、とは思っていた。
…それは今でも変わらないけど。

………ただ、今目の前で顔を紅くして震えてるこの女子が

本当に何にも知らないんだって

此奴の全てを手に入れるのが俺なんだって

確認出来たことが、どうしようもなく嬉しくて。









「───本当に、何にも知らないんだな…」


つい口を突いた言葉に反応した莉々は、俺に視線を寄越してその瞳を揺らした。


「………へ、平助くん、は…」


震える唇が俺の名を紡ぐ。
その声は、今にも泣き声に変わりそうで。


「……平助くんは………何でも知ってる…?」

「…………何でも、って」


何を?
意地悪く無垢な女に訊ねると、そいつは顔を真っ赤にして、目尻に涙を浮かばせて此方を睨んだ。
……悪いけど。
その顔、俺にとってみたら可愛くてかわいくて仕方ないだけだ。


「………っう、」


下唇を噛みながら、諦めたように横を向いて伏せた目から溢れた涙が、この胸を掻きむしりたくなるくらいの切なさを与える。


「…………ごめんな」


ひとつ、謝って。


「………知ってる、よ」


二言目に、小さく息を漏らして、またひとつ涙を溢す。
それを舐めとって、出来るだけ優しく…、強く抱き締めてやる。


「…こうすりゃあ、お前が泣き止むことくらいは」


知ってるよと今一度くちづけると、一瞬驚いたように目を丸くして。


「………なぁ、莉々」


俺だって、お前の過去は知らないし

他の男と世間話をしているだけで腹が立つし

お前より、嫉妬してると思う。

………だから。




「俺のものに、なってよ?」




返事の代わりに、綻んだ笑顔を見せてくれた。










飾った言葉なんか知らない、気の利かない男だけど。

これから先のお前の時間を

これから先の俺の時間を

すべて

共に刻んでゆけたなら。





『きみしかしらない』
(安心しなよ。ここから先、お前のすべては俺のものだし、俺のすべてはお前のものだから。…って、自分に言い聞かせてる)



*
初平助くん。
続き………書きたい。けど、需要なかったらあれなので反応次第で。

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