*

□そんな自分が出来る事
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 どうして彼は笑ってくれないのだろう。
 いつもどこか悲しげで、
 誰も近付けないような雰囲気が
 常に纏わり付いているような
 気さえして…不安になる。



「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………ねえ」



 静か過ぎる小さな空間。
 その中にあたし達はいた。

 ここは宿屋の部屋の中。
 あたしの視線の先には、
 ここに元からあったのであろう
 一冊の本に読み耽っている
 ジューダスの姿が見える。
 ちなみにカイルやリアラ達は
 皆で買い出しに出掛けていて、
 あたし達は宿で留守番、という状態。
 なのに、たった二人しかいない
 この状況の中でただひたすら本を
 読み続けるというのは如何なものか。
 思わずそう感じてしまい、
 耐え切れずに話し掛けたのだ。



「……なんだ」
「いつも気になってたんだけどさ、
 仮面付けたままで本って読めるの?」
「聞いてどうする」
「ただ気になっただけ。
 で?実際の所どうなの?」



 ストレートに疑問を投げ掛けると、
 ジューダスはどこか面倒だと
 言いたげな表情を
 ちらほらと見えた気がした。
 暫くして観念したらしく、
 小さく溜め息をつきながらゆっくりと
 本を閉じ、こちらを見てきた。



「一応読めているが?」
「へぇ〜。
 変な仮面付けてるのに読めてるんだ…」
「…そんなに斬られたいか」
「ジョーダン。っていうか
 レイピア抜かないでよ、恐いから。
 ……後、一つだけ。聞いていい?」
「…これで最後だからな。なんだ?」
「――ジューダスはどうして
 いつも悲しそうな顔してるの?
 …どうして笑わないの?」



 聞いては、いけない気がしていた。
 でも聞かずにはいられなかった。
 あたしの最後の問いを聞いた
 ジューダスのアメジストの瞳が
 僅かに揺らいだのが伝わって来る。
 そして、先ほどよりも長い沈黙の後、
 ようやく返答が返って来た。



「――僕には、資格がないからだ」
「?資格って、何の?」
「…お前には関係ない」
「関係ないって、
 そんな言い方ないんじゃないの?
 だいたいジューダスは色んなモノ
 たくさん背負い過ぎ!
 ……もっと頼ってくれても、
 いいじゃない…」



 思わず涙が溢れそうになる。
 俯いて、ただそうとしか言えなくて…。
 ――そう思った瞬間、頭に
 何かが置かれたような感じがした。
 目だけを頭の上へとやる。
 すると、ジューダスの手が
 あたしの頭にのっているのが見えた。



「ジューダス……?」
「お前は何も考えなくていい。
 ただ…僕の側にいてくれればいい。
 それだけでいいんだ、ユナ」



 その一言が嬉しかった。



「……うんっ!」



 さっきまでの悲しみは消え、
 あたしの顔には笑顔が宿った。
 それを見たジューダスも、
 僅かではあるが微笑みかけてくる。
 喜びを噛み締めながら、
 これからも彼と共に歩んでいきたい。
 そう思った。




*****


 ギャグしかなかったので、
 ジューダス夢を一つ追加。

 こういう感じのを書いていると、
 やっぱりリオンの頃に比べて性格が
 丸くなったなぁ…と思ってしまう。



2011.5.7




 

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