銀魂小説

□Dear
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00.
Dear、辰馬。
元気ですか、俺はまあ相変わらずだよ。
なあ辰馬。
お前は今も、どこかで笑っているんだよな?
なあ辰馬。
今の俺は、あんときのお前みたいに、ちゃんと笑えているのかな?

01.
生まれつき体が弱くて、昔から入退院を繰り返していた。近所に住んでいて、幼馴染みの高杉やヅラがいつも傍に居てくれたけど、俺に友達はそいつらしか居なかった。
 成長するにつれ、だいぶ体は丈夫になって、高校に通えるようにもなったけれど、それでも出席日数はギリギリ覚悟。中学時代だって、義務教育じゃなけりゃ、卒業が危うかった程だった。
 銀魂高校に入学した俺。本当ならもっとレベルの高い学校に通えた筈のヅラも、国立に行くよう親に勧められていた高杉も、俺の傍に居る為に、わざわざこの高校を受験してくれた。
 ハッキリ言って、銀魂高校はかなり「緩い」学校だ。出席日数は余所よりもかなり低いし、偏差値もいっそ笑い飛ばせるくらいのレベル。でも、中学時代の基礎がままならない俺にとっては、これくらいでちょうど良かったくらいだ。
 その学校を選んだ事で、喜びもするし、激しい後悔をする羽目になるなんて、入学時点では、思わなかったんだ。

 予想通り学年首位として入学したヅラの誂(あつら)えたようなコメント(実際はそうは言わないらしいけど)と、校長の長ったらしい話を聞き終えて、やっと解放された俺達は、発表された通りの教室へ向かった。
 親類―――俺には両親が居ません―――が、学校側に交渉してくれたらしく、俺達3人はキッチリ同じクラスだった。
 自分の名前が貼られた机を見つけて、俺はそこに腰掛ける。すると、チョンチョンと肩を叩かれて、思わず後ろを振り向いた。
 「はろー♪」
 「・・・・・・はろー?」
 茶色のモジャモジャが、そこにあった。正確に言うと、そこに居た、なのだけれど。
 当たり前だけれど俺と同じ制服を着て(若干崩しているけれど)、気さくそうな笑みと共に明るい声で。片手を振って。
 「アハハハハッ、どうもー、坂田銀時君言うんかー。わしゃあ坂本辰馬。まー好きなように呼んでくりゃれ」
 「・・・じゃあモジャ」
 「何で!?」
 これが俺、坂田銀時と坂本辰馬の出会いだったんだよね〜〜〜・・・・・・。
 ・・・・・・良いの?こんなんで。
 え、マジでちゃんと恋愛小説になるわけ?
 あれ?ん?いいの?

 02.
 高杉やヅラは、俺が辰馬と絡む事をあまり快く思っていなかったようだ。
 まぁ、考えるまでもなく。
 あのテンションに付き合って、俺がまた体調を崩すような事があっては困る。何かあってからでは遅いのだ。
 けれど俺は―――高杉やヅラ以外に出来た初めての友達だから、辰馬の事を失いたくなかった。
だから俺は、必死で2人を説き伏せた。最初の内は、全然首を縦に振ろうとしなかった2人だけれど、最後には黙って手を放してくれた。勿論条件付きだけれど。常に4人で居る事。俺と、辰馬と、高杉と、ヅラと。4人で行動する事。
俺にとっては、結果オーライ。
皆で一緒に居られれば、それだけで楽しいから。
「金時ィー!帰ろうきにー♪」
「銀時な?もうイチイチツッコむ気も失せるよ。つーかヅラと高杉は」
「直ぐ来るき、ちっくと待ちとうぜ」
授業が終了し、それぞれ部活へ向かったり帰宅したり、生徒達の姿が教室内にまばらになり始めた頃、辰馬が俺の肩を軽く叩いた。
既に教室は茜色に染まり始めていた。
教室にない高杉とヅラの姿を探して、俺はキョロキョロと辺りを見回す。
「そっか、じゃあ仕方ねぇな」
 そう言って、俺は持ち上げかけた腰を再び椅子に降ろした。辰馬は鞄を肩にかけて、立ち上がると、俺の前の席に腰掛けてグルンと振り向いた。
 「銀時」
 そう呼ばれて。
 俺は少しだけ、ドキッとした。
 あまり、ちゃんと名前で呼ばれないから。
 「な・・・何?」
 普段あまり見せないような、ヘラっと笑っているくせに、どこか真剣な表情。
 で、何を言い出すのかと思えば。
 「好き」
 「・・・はい?」
 「好き」
 「うん知ってる」
 それくらい、知ってる。
 だってもう、ずっと前から。
 毎日のように、「好き」って。
 言ってきたじゃないか、お前は。
 「本気」
 「分かってる」
 本気なのも、知ってる。
 Like(ライク)じゃなくて、Love(ラブ)なんだろ?
 知ってるさ―――分かってるよ。
 「おんしは?」
 「・・・・・・好き」
 無意識のうちに。
 俺と辰馬の唇は、重なっていた。
 多分、俺の顔は赤かったんだと思う。
 夕方で良かったと思った。分かりにくくなるから。
 茜色に染まる教室で。
 俺は初めてのキスを経験した。
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