3.世界の再構築と、くり返される歴史



さらに興味深いことには、ゼロシリーズでは、ここでシエルさんが登場することによって、希望ピラミッドを以前のような形に再構築してしまうんですな。
荒廃した世界は、既存の勢力に抵抗[レジスタンス]しようとするレジスタンスに希望を託し、そのレジスタンスはさてどこに頼るかというと、これがまたゼロさんなわけです。

<Χシリーズにおける希望ピラミッド>
世界の寄り処→エックス→エックスの寄り処→ゼロ

<ゼロシリーズにおける希望ピラミッド>
世界の寄り処→レジスタンス(シエル)→シエルの寄り処→ゼロ

この図を見て分かるとおり、Χシリーズでのエックスポジションがシエルに置き換わっただけ。
ようするに、ゼロ→エックス→世界の順序で荒廃へと向かった世界は、そのピラミッドがふたたびゼロを頂点とする形に戻ることによって、つかの間の安寧を取り戻すわけです。
したがって、ゼロさんは『オレを目覚めさせて、どうしようっていうんだ…』(ロクゼロドラマCD「Ciel’s Memory」)とボヤきつつも世界のために叩き起こされてしまうわけで、それはある意味では当然の成り行き(?)ともいえるのです。まあつまり、(本人はあずかり知らぬ事だろうけれど)ゼロさんがてっぺんに立ちさえすれば、いつも世界はうまく回っていくわけで。

で、ゼロさんはまたしてもピラミッドの頂点に立ってしまうので、頼るべきところはないまま守るべきものばかり増えていく、というかつての構図もそのまま引き継いでしまいます。
ただ、ゼロシリーズにおけるゼロさんは「オレはなやまない」の人なので(悩まない理由は色々と考えられますが、まずは過去の記憶がほとんど無いこと、そして彼の中にオメガ(覚醒ゼロ)がいないというのも大きいと思います[オメガはDr.バイルが分離して、どこかに持ってっちゃった]。それによって、ゼロは自分が凶器に豹変する可能性を考慮しなくて済んでいるので)、そのへんの負荷はΧシリーズのゼロさんよりは比較的少ないかもしれません。



4.十字架物語

ともあれΧシリーズでは、ゼロの封印はある意味避けがたい手段というか究極の解決策のように見られているけれど、案外そうでもないかもよというのを今回、延々遠回りしながら見てきたわけですが。
ゼロが封印されたからといって、それによって必ずしも世界は荒廃を免れるわけではないし、エックスが生きやすくなるとも言い難い。そのへんゼロは解っていない――いや、解っているけど、世界のために、ひいてはエックスのためにと思って、自分の「死」へと突き進んでいくのだろう。

まあ、その点ではむしろ元上官であるシグマのほうが裏をよくわかってると思います。

『ひとがきずつくのは たえられないだろ?』
『とくにゼロをきずつけたら くるしいだろ? おまえにあたえる くるしみはたえても…』
(Χ5エックス・シグマ戦)

ここで最大ポイントなのは、おまえに与える苦しみは耐えても、というところだと思う。
サイトの「未知数と零(1)」でも書いてますが、この「苦しみは耐えても」は、ゼロさんがいて始めて成立するものだと思うのです。エックスさんがたった一人で永遠に苦しみに耐えていける、というよりは、エックスさんの隣にゼロがいることで、初めてそのエックス本来の「強さ」が遺憾なく発揮される。
ハンターになりたての頃はもちろん先輩に助けられてばかりだったろうし(イレギュラーハンターΧ冒頭部の『ありがとう またきみに助けられた』)、Χ3では初っ端から天井に吊される(!)という憂き目に遭い、ここでもやっぱりゼロさんに救われてます。その後、エックスがどんどん強くなっていっても、ゼロはエックスにとっての心の寄りどころであり続けている。それは、Χ4のラストで、自分自身の中に生じた「イレギュラー化」の畏怖をゼロに委ねることで和らげようとするエックスの姿勢からも見て取れます。
そして、同じΧ4のラスト、ほとんど同じような畏怖を感じたゼロはひとり『オレたちレプリロイドは、結局みんなイレギュラーなのか…?』と「自分の心の中だけで」つぶやく。
つまり、エックスさんは気休めでもゼロに預けることで少しは安らげるけれど、ゼロのそれは行き場がない。
このΧ4のエックスENDとゼロENDという二つのラストに、Χシリーズの構図が凝縮されているような気がします。





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