紅眼の発狂者
□序章 Don't be afraid
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『もう、……撤退命令が出た……………帰ろう』
『…………』
しかし返事はない。
当たりは殺風景で広い高野なはずなのに酷く血なまぐさかった。
揺さぶっても青年は起きない。
『─…ラーナ』
少女の後ろには黒い眼帯を付けた青年が立っていた。
彼もまた軍服姿、そしてボロボロだった。
悲しそうにしながら少女に近づき口を開く。
『ラーナ、もう行かなきゃ』
『……まだ………ブレッドが起きない』
『─…早く撤退しなきゃ』
『………ブレッドを起こさなきゃ』
すると少女の後ろに佇んでいた青年は苦しそうに、悲しげな瞳で横たわる青年を見つめた。