闇夜の混合

□ガラス玉の行方     『新しい、名前。』
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あれから、何日かが過ぎた。

あいつは見る見るうちに、回復のきざしに向かい、みんなともうち解けた。

だがしかし、あいつは、その名前を誰にもあかしていなかった。

「なぁ、ゾロ〜。」

「う〜ん。どうしたんだ?ルフィ。」

暇な午前、俺は何をする出もなくいつもの特等席にて、居眠りを始める前のゾロへと話しかけた。

「あいつの名前、なんなんだろうなぁ。」

「あいつ?」

「あいつといったらあいつだよ!新入り!
 なんだかんだで、いっつもはぐらかされて、誰一人、あいつの名前聞いてねぇんだよ!」

そう、俺がまくし立てると、ゾロは、そう言われてみれば・・・と、
おもむろにこちらへと歩んできて言った。

「こないだ、チョッパーとナミが、あいつに事情聴取?みたいなことしていたなぁ。
 そんで、あいつの世界についてとか、あいつが元は剣士だって事なんかは聞いたけど、
 あいつの身の回りのことを聞こうとすると、とたんに渋りだして、
しゅべらなかったつってたな。」

と、教えてくれた。

「そっか。
なんか言いたくないことでもあんなかなぁ?
それにしたって名前ぐらい。」

そう俺が、小さくぼやくと・・・。

「まぁ、そういってやんなよ。
 あいつ、なにかといろいろアルみたいだし、
 最初にきいた台詞にしても何にしても、
なんかいろいろ在るんじゃねぇか?
焦らずまってやんな!
もう、俺達は仲間なんだからよ!」

そう、いって、ゾロは俺の頭に手を置いて、慰めてくれた。

と、そこへ・・・。

「お〜い。昼にすんぞ〜。
 やろうども〜、手伝いやだれ〜。」

と、サンジが昼を知らせてきた。

よしっ!と俺は立ち上がって、ゾロと一緒に食堂へと足を向けた。


俺が勢いよく扉を開けると其処には、あいつとチョッパーが来ていて、
サンジの手伝いをしていた。

あいつは、目覚めてから、何かにつけて、手伝いたがった。

「体が本調子に戻るまでは大人しくしていろ!」って、みんなに言われていたけれど、
「大丈夫!」の一点張りで、がんとして受け入れず、誰かが手がほしいときなんかに、
絶対に誰よりも早くそいつの元に言って、手を貸していた。

始めは誰しもが心配した。

其処までに回復するまでの、あの弱り切った体の事を誰もがしっていたのもあって、
あいつの顔を見るたびに、どうしても倒れるあいつの姿が、みんなの脳裏に過ぎったからだ。

また、あの華奢で、端正な体着きに、どうしても心配してしまったのだ。

そんなのもあって、誰も最初は手伝わせようとしなかった。
けれど、あいつは俺達の仲間になったんだから、そんなきずかいは無用!とばかりに、
誰が何と言おうと、手伝いたがった。
あまりに熱心だったので、それに負けて、自然とみんなあいつの手をかりるようになっていった。

それからなし崩し敵に、みんなあいつに心開き、こうして普通に馴染むまでとあいなった。

まぁ、船医であるチョッパーだけは、いつまでも渋い顔をしていたけれど・・・。

んで、今に至っている。

「なぁ、サンジ。これは何処に置けばいいんだ?」

「あぁ、それは右端においてくれ。」

「OK!」

そういって今もサンジの手伝いをしている。

「これは?」

「ん?」

「ちょっ、駄目だよ!そんな重いものもちゃ!傷に響く!」

ちょっと、無茶しすぎなきもするけどなぁ・・・(汗)


そんなことをうだうだとやっている間に、仕度は整い。
気が付けば、昼食の席と相成った。


それから、みんなでわいわいやりながら、昼食を済ませて、
みんなが思い思いに、くつろぎ初めた所で、
俺はおもむろに、さっきのゾロとの会話を思い出し、
直接本人に聞いてみることにした。

「なぁ?」

「ん?」

「お前、名前なんていうんだ?」

「!!」

その場は、一瞬時間が止まった。
きっと、誰もが聞きたかったのだろうあいつの名前。
聞かれたあいつは、驚き戸惑っているようだったけれど、
他のみんなは、聞きたくてうずうずしている感じ。

さぁ、どうする?

「俺は、・・・自分自身の名前なんてないんだ。」

「「「「「「!!」」」」」」」

その言葉に、俺達はみんな驚いた。
そして、そんな中、「あいつには何かが在るんだ!」といっていた、ゾロが、おもむろに
あいつに問うた。

「どういうことだ。」

その言葉に対して、あいつは諦めたのだろう。
いや、いつかは俺達に言うつもりでいたのだろう、そんな気持ちが伝わってくるような、
とても悲しい、また驚きの事実を話してくれた。

「・・・俺は人間じゃないんだ。
 フォミクリーっていう、俺の世界の技術によって生まれた・・・。
 劣化複写人間、・・・レプリカ・・・なんだ。
・・・だから、・・・今まで、名乗っていた名前は・・・俺の被験者の名で、
俺自身には、・・名はないんだ・・・。」

そう、悲しく微笑みながら、あいつは言った。
そんな言葉に、俺達は何を言っていいのか分からなかった。
そして、俺は後悔した。

やっぱり、ゾロのいった通り、聞かなければよかった!
あいつに、こんな悲しい顔させる気なんてなかったのに!

ただ、あいつともっと近づきたい!仲良くなりたい!

そう思っただけだったのに・・・。

もう少し、待つべきだった。

世界に捨てられたという、
こいつの気持ちの整理がつくまででも・・・。

と―――――。
そして、どうすればいいのか考えた。

このままでは悲しすぎる・・・

・・・そうだ!!

そして、俺は考えた事をみんなに、なによりも、あいつに伝えた・・・。

「お前の名前!みんなで考えようぜ!
もうここには、お前の事を呼びたくて、
うずうずしているやつらがたくさんいるんだ!
もちろん、俺だってそうだし、
なにより、お前みたいな最高なやつを見捨てるような、
世界のときの名前なんて、どうでもいい!
今は、俺達の世界の、俺達の仲間なんだ!
なら、俺達で、お前の名前を考えようぜ!
だって、大切な仲間なんだからよ!」

俺は、一気に言い切った。
その言葉に、一番驚いていたのは、やっぱりあいつで・・・。
泣かせてしまったけれど、
その涙は、うれし涙だったようだ。

仲間達も、さっきまでの沈んだ表情はどこへやら、「そうと、決まれば!」
と勇んで、思い思いの名を挙げていく。

しんみりしていた空気は、いつの間にか晴れていて、
気が付けばいつもの雰囲気が、笑顔と伴に流れていた。


「よしっ!今日からお前はロンヘア=シュゼインだ!
これからは、シュゼかシュゼインって呼ぶこと!
わかったか、やろうども!」

「「「「「おぅ!!」」」」」」

「あ、ありがとう!みんな!
 ありがとうな!ルフィ!」

そういって、あいつは今までにみせたことのない、満面の笑顔をその顔にやどしていた。

この笑顔が消えることがないといいと、俺は、その笑顔をしみじみと見続けていた。
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