【 世界の中心で、愛とパスタとSOSを叫ぶ 】
□【世界旅行1周目:Prologue】
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〜とある森〜
俺は中欧のドイツ[ルートヴィッヒ]。
俺は今、そのローマの子孫とやらと戦ってるはずなんだが…。
独「……おかしい。
木の棒一本で楽々国境越えしてしまったぞ!」
手に持っている木の棒一本を眺め、思わずそう口にする。
今まで幾度なる戦争を経験しては、生き延びてきた俺だったが…。
まさかこんなヴルスト食う余裕がある国境越えは初めてだ!
※【ヴルスト】
ドイツのソーセージ。
腸詰。
元は中国の北西部の遊牧民が作っていた物が、ヨーロッパに伝わったと言われている。
敵を見かけても、そそくさと何処かへ行ってしまうし…。
これは夢か?
独「いや、しかし油断は出来ん!
奴のことだ、きっと何か策を練ってあるに違いない。
これは油断させる為の罠か何かだ!」
そうとも、何せ相手は、あの“地中海の覇者”と謳われた『ローマ帝国』の子孫だ。
そのチカラは相当なものだろう。
もしかしたら、その地位を利用する、とんでもない極悪人の可能性もある…!
そんな奴等の悪知恵ほど、厄介なものはない。
独「ここは慎重に…ん?」
警戒を緩めずに、森の中をさらに進んでいけば、一本の木が目に見えた。
他の木々に囲まれるように中央に立っていたソレは、太陽の光を存分に浴びて、葉を青々と茂らせている。
だが、俺が足を止めたのは、何も別にその木が珍しかったから等というわけではない(至って普通の木だ)。
俺が足を止めたのは、その木の上に“人影”が見えたからだ。
太陽の光やら、木の枝や葉やらで、そのシルエットの正体ははっきりとは分からない。
しかし、ソレは俺に気付いていないらしく、ゆっくりと木に登っていっていた。
独「(何だ、一般人か?
だとしたらどうしてこんな所に?
…いや、もしかしたら敵国の奴かもしれん!)」
背負っていた銃を構え、低く身を屈(かが)める。
まずは人影の正体を暴く為に、罠か何か無いかを確認しながら、その木に少しずつ近づいて行く…。
?「―――大丈夫だよ、もうすぐだからね?」
木の上から、そう声が聞こえた気がした―…。
あまりにもその声色は、優しかった。
?「―――………良かった、もうこれで大丈夫だよ」
だが、その瞬間だった。
人を乗せた枝が、長い時間その状態を保つことが出来るはずもなく―――。
重力の法則に従い、先の方から下へ下へと枝が曲がり出し、遂に事態は起こった!
<ベキ、ベキべき―…バキッ!!>
?「―っ!?
やっ―――きゃあっ!」
独「なっ―――危ない!」
俺は、茂みの中から素早く飛び出した。
相手の正体が何だとか、そんな細かい事は、この時何も考えていなかった。
枝が折れて、人が落ちてきた。
その状況が、俺を無意識に動かした―…。
<ドサッ!>
無我夢中になりながらも、何とか両腕の中に、落ちてきたソレを受け止める。
下敷きになってしまって、背中が少し痛かったが、そんなのはどうでも良かった。
ただ、その時―…。
花にも似た香りと柔らかさが、この俺の体へと伝わってきた。
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