【 世界の中心で、愛とパスタとSOSを叫ぶ 】

□【世界旅行2周目:ローマの休日】
4ページ/6ページ




くっ、斯(か)くなる上は―…!


ルートヴィッヒは行動に移る。

ガチャッと、牢屋のドアが音を立てた。



独「ほ、ほら見てみろ
  牢屋のドアが開いてるぞ!
  逃げ出さないのか?」

伊「んむぅ〜…」



逃げたいと思わせたいのなら、わざと逃げれる状況を作れば良い。

試しにと、牢屋のドアを開けてみる。


フェリシアは枕を抱えて起き上がり、開かれたドアとルートヴィッヒを交互に見た。

ルートヴィッヒが頷(うなず)くのを見ると、彼女は立ち上がり、ドアの前まで歩み寄る。


そして、もう一度ルートヴィッヒの顔を見た。

少し戸惑っているような感じが、彼女の表情から見て取れる。



あれ、何だか一瞬、犬の垂れたしっぽと耳が見えたような…。



独「う…
  (いや、コレも兵士としての自覚を取り戻す為!)」



1つの決意(?)を元に、「ほら」と、ルートヴィッヒはもう一度外を指差した。

(最も、捕獲した敵兵を自ら逃がすだなんて、前代未聞であるけれど…。)


そんな彼を横目に見て、フェリシアは枕をギュッと握り、少しの間、口を閉じる。

普段は鼻歌を歌ったり、変な声が出たりして賑やかな分、この沈黙は妙に居心地が悪かった。



独「っ………あ、あのな!
  俺は別に、お前をココから追い出すわけでは―!」



何故かこの状況に、弁解を口にするルートヴィッヒ。

敵同士だというのに、何を焦っているのだろうか。

まるで、彼女には自分をそんな風に見てほしくないと、そう振る舞っている様だ…。


フェリシアもその姿に違和感を覚えたのだろうか。

キョトンとしては、琥珀色の大きな瞳を何度もパチパチとさせた。



伊「(どうしたんだろうルート…。
   何か不味いことでもあったのかな?
   あ、でも確かに外って久しぶりだぁー。
   せっかくだし、お買い物だけでもしてこよっかな)」

独「あーその、だからつまり―…って、おい!」



突如、フェリシアは「はい」と、ルートヴィッヒに手にしていた枕を預ける。

弁解を遮られ、彼はまだ何か言いたそうに顔を顰(しか)めた。


しかし、その弁解したい相手である彼女は、すでに外に駈け出していた。



伊「じゃあ、ルート!
   私、ちょっと息抜きに買い物してくるねー」

独「え…あ、あぁ」



「行ってきまーす!」と、手を振りながら笑顔で言うフェリシア。

そんな彼女に釣られて、ルートヴィッヒも思わず手を振り返したのだが―…。


いやちょっと待て。

捕虜のくせにその台詞はダメだろ。



彼の心の中で、以上のようなツッコミが湧き上がる(口に出そうだったがソコは耐えた)。



独「(ま、まぁ一応コレで逃げた?、わけだしな…。
   うむ、あとはこのまま兵士としての自覚が戻れば―)」



しかし、そう安心したのも束の間―。



男1「あの、もしかしてココ初めてですか?」

伊「え?、えーと…」

男2「失礼、さっきから何か物珍しそうに辺りを見回してたので…」



フェリシアが脱出(?)してから、ものの数秒後。

彼女はすぐに現地の男性に声をかけられた。

キョロキョロと辺りを見渡していた姿が印象に残ったのだろう。


いや、ソレだけではない。

彼女は町中で、実に魅力的だった。

日の光を浴びた美しい髪がより一層輝き、琥珀色の瞳は人を引き寄せる。


加えてあの美貌だ。

立っているだけで、フェリシアは男性達を魅了してしまったのだ。

ソレは女性達も例外ではなく、至る所から羨望の眼差しが向けられていた。


そんな魅力的な彼女を、男達が声をかけられずにいられるわけがなかった―…。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ