【 世界の中心で、愛とパスタとSOSを叫ぶ 】
□【世界旅行9周目:イタリアの特技】
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伊「ヴェ、ヴェ、ヴェ、ヴェ〜♪」
上機嫌な様子で、歌でも歌うように奇妙な鳴き声(?)を発するフェリシア。
その事に気付いたルートヴィッヒは、何気なく彼女に声をかけてみた。
独「むっ…##NAMW2##、今日はやけに機嫌が良いな」
伊「あっ、ルート!
えへへへ〜…ちょっとね///!」
彼からそう呼び止められると、フェリシアは恥かしそうに、しかし何処か幸せそうに微笑んだ。
彼女のその笑みは、相変わらず日の光のように思えたルートヴィッヒだったが、何故か、いつもの笑顔よりも“違和感”を感じた…。
独「(?…何だ、この違和感は………?)」
理由は分からないが、確かに感じてならないソレに、「何だ?」と疑問を抱くルートヴィッヒ…。
そんな事を彼が考えているとも知らず、フェリシアは嬉しそうに語り始めた。
伊「ふふふ…。
あのね、実は今日、とっても素敵な夢を見たんだ!」
独「『夢』…?
何だ、パスタ食べ放題の夢でも見たのか?」
伊「ヴェ、ソレも捨て難いけど…じゃなくて!
違うよぉ〜、私が小さかった頃の夢を見たの!
ローデリヒさんのピアノを聞いたり、エリザベータさんとお洗濯物を干したり、あと―」
フェリシアが、ほんのりと顔を赤らめた。
伊「“初恋の人”と一緒に兎の絵を描いたりした、そんな頃の夢を見たの…///」
独「っ―…!」
彼女のその笑顔は、普段ルートヴィッヒに向けているものよりも、ずっと輝いているように見えて―。
初恋の相手が、本当に愛おしいのだと思っているのが分かると、彼は左胸にチクリと痛みが走ったのを感じた。
ソレと同時に、表現し難いぐるぐるとした気持ちの悪い感情が、心の奥底から徐々に体中を蝕(むしば)んていくような感覚に襲われる。
当然、ルートヴィッヒはその感情の名前を知らない…。
ただ、目の前の彼女にイライラせずにはいられなかった。
独「………だたの夢で、よくもそんなに笑えるものだな」
伊「ヴェ?、ルート…?」
ああ、駄目だ。
それ以上は駄目だ。
彼の残った理性がそう叫ぶ。
しかし、一度開いた口はもう止まらなかった…。
独「フェリ、今は戦争中だ。
そんなどうでも良い事は早く忘れて、生き延びることに集中しろ」
伊「!―………いもん」
独「<ハッ>………フェリ…?」
負の感情に囚われつつあったルートヴィッヒが、彼女の声で我に返る。
そして、彼は俯いてしまったフェリシアに声を掛けてみると、彼女の顔が勢い良く上がった。
ルートヴィッヒは、目を丸くして驚く。
ソコにあったのは、初めて見るフェリシアの怒りの顔だった。
伊「確かにただの夢だけど…でも、どうでも良くないもんっ!!!」
独「!?、フェリ―!」
ルートヴィッヒが呼び止める前に、フェリシアは何処かへ走り去ってしまった。
ポツリと1人取り残された彼は、イライラを含んだ大きな溜め息をこぼす。
何故、あんな事を言ってしまったのだろう…。
顔が上がった際に見えた、彼女の目尻に溜まっていた涙が、目に焼き付いて離れなかった…。
【世界旅行9周目:イタリアの特技】 ―世界は人の数だけ特技がある!―
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