【 世界の中心で、愛とパスタとSOSを叫ぶ 】
□【世界旅行10周目:初めまして、日本です】
3ページ/4ページ
ココは、東洋の島国である“日本”。
北から南まで、細長い島で成り立っている。
春・夏・秋・冬の四季を体感することが出来、風流を粋とする国だ。
そんな“日本”という国を“具現化”した―。
謂(い)わば“象徴的存在”である人物が、ルートヴィッヒの目の前にいる『本田 菊』である。
白い軍服で身を包んだ彼は、落ち着いた表情で静かに座っていた。
日「『フェリシア』さん…ですか」
本田の口からは、彼女の名前が紡(つむ)がれる。
すると、無表情に近いその顔を、キリッと凛々しいものにさせた。
日「イタリアと言えば、芸術に歴史に文化にと、私も色々と学ぶべき所が多いお方…」
独「ああ…<チラ、チラ>」
真剣な顔付きで、本田がそう発言している中。
自身の後ろに控えているフェリシアに、チラチラと何度も視線を送るルートヴィッヒ…。
彼が何故そんなにも彼女の事を気にしてるのか、というと―?
日「御会いするのが楽しみ…と、言いたいのですが…」
考える為に目を閉じて、すぐに開いた後。
本田は再びフェリシアに視線を向ける。
そして、落ち着きがありながらも何処か焦ったような声で、こう言った。
日「まさか私から向かって左に見える、どう見ても不審人物のあの方とは別人ですよね。
ええ、信じています。
断じてアレではないと!」
独「オレも信じたくないが、アレなんだ…」
伊「チャオ♪
貴女、とっても可愛いわね!
着ている服も素敵だし、良く似合ってるわ♪」
2人の男性に『アレ』呼ばわりされたフェリシアは、なんとこんな所にまで来て女性と楽しくお喋りをしていたのだった…。
独「こら、フェリ!
本田の前ではしっかりしてろと約束しただろう!?」
伊「えー、だって日本の女の子かわいi―きゃああぁ」
ルートヴィッヒに捕らえられ、米神(こめかみ)辺りを拳でぐりぐり押し当てられたフェリシアは、痛みに耐え切れずに悲鳴を上げる。
椅子から立ち上がった本田は、そんな2人の仲睦ましい(?)やり取りを見ながら、流れるように自己紹介を始めた。
日「…初めまして、フェリシアさん。
私が“日本”の『本田 菊』です。
趣味は空気を読んで発言を慎むことです」
空気を読んで発言を慎むこと[ソレ]は趣味としてどうなのだろうか…
伊「あっ、可愛い!
私と同じくらい!
ねぇ君、このルートおじちゃんに何か言ってやってよ!」
日「Σ失礼な!
私は貴女(あなた)よりうんと爺さんですよ!」
伊「Σヴェエエ!?
そ、そうなの!??」
日「そうですとも!」
「これでも2000年以上は生きてるんです!」。
見た目に反して随分と年を取っていた本田に、フェリシアは目をパチパチとさせる。
伊「ヴェー…こんなに可愛いのに?」
そう言って、本田の前に顔をグイと近付けてきた彼女。
整った綺麗な顔が目の前に現れて、本田は思わずギョッとする。
日「え、あ、あの―///!」
独「フェリ!
本田が困ってるだろう、止めないか!」
伊「ヴェ?」
ベリッ!と、勢い良く日伊の2人を引き離したルートヴィッヒ。
「済まないな本田」と、フェリシアの代わりに一言詫びを入れた彼は、彼女に向き直って説経を始める。
本田は正直(主に心臓が)助かったようで、静かにそっと息を吐いた。
独「全くお前というヤツは!
女性として、もう少し落ち着いた振る舞いというものをだな―!」
伊「ヴェ〜
そんなに怒んないでよルートぉ
だってホントにびっくりしたからさー」
独「だ、だからと言って!
あんなに顔を近付けることもないだろうっ///!」
日「…―!
(………、おやおや、コレはもしや―?)」
フェリシアに向けているルートヴィッヒの瞳や表情に、“何か”を感じ取った本田は、「もしかして」と口元を隠す。
勿論、“ソレ”が勘違いだということも有り得るのだが、彼も伊達(だて)に長生きしていない。
妙なところで、年寄りの勘というものは冴えてくるものである。
ましてや本田は、場の空気を読むのが得意な日本の象徴…。
今回のような、“ある者がある者に対して抱く想い”にも、何となく気付くようになっていた。
独「はぁ、しょうがないな…。
今回はこれで勘弁してやるから、次からは気を付けるように」
伊「うんうん、分かったよルート!」
独「Σこ、コラ!
こんな所でくっつくな///!!」
伊「ヴェー♪」
日「(…ああ、やはり“そう”なんですね、ルートヴィッヒさん。
貴男自身が、“ソレ”に気付いているのかどうかは分かりませんが。
………青春ですか、良いですねぇー…)」
日本は世界に進出したばかりだ。
故(ゆえ)に、まだまだドイツとイタリアのことも分からない…。
しかし、この2国のことは、これから少しずつ知っていけば良い。
慣れないことも多く、諸外国と上手くやっていけるかどうかと不安もあったが―。
“これから”が気になる微笑ましい彼等とは、何だか仲良くなれそうだ。
時にはお節介を焼いてしまうかもしれないが、「年寄りの楽しみが1つ増えた」と、2人に気付かれないよう密かに微笑む本田なのであった…。
◆まるで孫を見るような目
爺(じじい)はキラキラした若者が大好きです。
日「ふふふ、お2人は本当に仲が宜しいんですね」
独「Σほ、本田…///!?」
伊「えへへー♪
そう、仲良しなの!」
独「フェリ///!」
(NextPage:後書き)
.