過去のWeb拍手ストーリー

□baby baby baby〜6 オマケ@
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ふぎゃ…ふぎゃー…

「ん…」


赤ん坊の泣き声がして、ハヤテは目を覚ました。

時刻はまだ午前2時前。部屋の中は真っ暗だった。

隣の部屋から聞こえる泣き声と話し声で、赤ん坊の夜泣きに対処しているシン達の様子が何となく窺える。

(シンのやつ、昨日も夜泣きした赤ん坊の世話してたよな…)

ハヤテはボンヤリ考えていた。

赤ん坊の泣き声はしばらく続き、やがてシン達が廊下に出る音がした。

二つの足音は赤ん坊の泣き声を伴い、通り過ぎて行く。

甲板へと続く扉が閉められる音がしたと同時に、泣き声は聞こえなくなった。

再び船内に静寂が戻る。

(大変なんだな、赤ん坊の世話って)

ハヤテはもう一度眠りに就こうと、寝返りをうって目を閉じた。
その時…


ギィッ…


どこかの扉が開く音がする。


「…?」


ハヤテは不思議に思って目を開け、ドアの方を見た。

ドア越しに、誰かが廊下を歩く音が聞こえる。


(何だ…?)


ハヤテはそっとベッドから起き上がり、部屋のドアを少し開けて廊下を覗いてみた。

仄かに灯るランプに照らされて歩いていたのは、ナギだった。


「なんだ、ナギ兄か」


ハヤテは警戒を解き、その背中を追う。


「ナギ兄も、さっきの泣き声で目が覚めたのか?」


すると、ハヤテの声を聞いたナギが、ピタッと止まった。


「…ナギ兄…?」


ハヤテがナギの顔を覗き込もうとすると、下の方でジャラッと音がした。


(え…?)


ナギの手に握られているのは…鎖鎌。


ハヤテは、この光景に憶えがあった。

あれは、この船に来たばかりの頃。


夜中に空腹で眠れなくなってしまい、ナギを起こした時だった。

あの時、ナギはゆっくりと起き上がると…
いきなり鎖鎌を振り回してきたのだ。


死にもの狂いでナギの部屋を逃げ出したハヤテは、向かいのシンの部屋に飛び込んで事なきを得た。


その時の光景がフラッシュバックし、ハヤテはようやく判断する。


(俺…またやっちゃった…?)


その瞬間…


ヒュン!


「うわっ!;」


ナギが鎖鎌を振り回してきた。

ハヤテは咄嗟に身を屈めて避ける。


「逃げんじゃ…ねぇよ!」


間髪入れず、次の攻撃が繰り出された。


「ちょっ…ナギ兄待てよ!俺だ!;」


ハヤテは必死でナギに訴えかけるが、寝ぼけているナギには届かない。


やべぇ…

俺、死ぬ!;

いま俺丸腰だし、ナギ兄に敵うワケねーじゃん!

誰かに助けを…
そうだ!ソウシさん!

いや待て

ソウシさん今日見張番だった!;

じゃあトワ……は3秒で殺されるな…

あーもう!
どうすりゃいいんだよコレ!;


ヒュン!


「うわぁっ!」


ハヤテの頬ギリギリを、鎖鎌が飛ぶ。



お、落ち着け俺!;

あの時…

シンの部屋に飛び込んだ時、シンはどうやってナギ兄を止めてたっけ?

えーっと!

確か…


―――


ハヤテ『うわあぁぁ!』


バンッ!


シン『!?』


ジャキン!


ハヤテ『うわっ!待て!俺だ!;』

シン『なんだハヤテか。何やってんだお前。真夜中に人の部屋に転がり込んできて…夜這いならもっと静かにやれ』

ハヤテ『冗談言ってる場合じゃねーんだよ!ナギ兄がなんか変なんだよ!;』

シン『ナギが?』

ハヤテ『ぎゃーっ!来たーっ!』


ジャラッ…


ナギ『そこか…!』

ヒュン!


ハヤテ『うわぁ!』

シン『チッ…、お前余計なことしてくれたな』

ハヤテ『なんで!ただ起こしただけだろ!』

シン『起こすなら完全に起こしてやれ。中途半端に起こすからこうなるんだ。
…で?どうする』

ハヤテ『どうするって…俺が聞きてぇよ!』

シン『違う。今ここでナギを寝かすか、起こすか…どっちがいい?』

ハヤテ『は?いや…腹減ったし、起こして貰った方が…』

シン『よし』

ナギ『お前らまとめて…オロしてやる…』


ヒュン!


ハヤテ『あぶね…っ』

シン『…』←避ける


スパーン!!


ハヤテ『!?;』

(ひ、平手打ち!?)

ナギ『……』

ハヤテ『お、おい…なんか今のすっげー痛そうだったけど…;』


シン『当たり前だろ。痛くしたんだからな』

ナギ『……痛ぇ』

シン『起きたか、ナギ』

ナギ『…なんで俺ここにいるんだ?』

ハヤテ『ナ、ナギ兄!良かった〜!!(泣)』

ナギ『??…なに泣いてんだハヤテ』

シン『どうでもいいから早く出ていけ。こっちは疲れてて眠いんだよ』

ハヤテ『うぅっ…ナギ兄、腹減った〜(泣)』

ナギ『泣く程かよ?わかったよ。なんか作ってやるから…』


―――


そうだ

確かあの時、シンは平手打ちでナギ兄を起こしてた。

(あの後ナギ兄の頬っぺた腫れて大変だったけど)

いや、でもあれってナギ兄を起こしたい時の方法だよな?
逆に寝かせたい場合って、どうすんだ?

あぁ、くそ!
そっちもシンに聞いときゃ良かった!



ハヤテが後悔していると、ナギがユラリと前に立ち塞がった。


「…貴様…鎖鎌のサビにしてやる!」


ヒュン!


「ぎゃっ!」


これもう色々考えてる暇なくね!?

くそっ!ナギ兄に平手打ちって、後が怖いけど…やるしかねぇ!


そう考えているうちに、ナギが再度鎖鎌を繰り出してくる。

ハヤテはそれをうまく避けきると…


「ナギ兄!悪ぃ!」


と、右手をナギの頬目掛けて振った。

その瞬間…
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