すばせか
□たとえばこんな平和な日
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北虹との最後の戦いを見事勝利した4人は生き返り、ハチ公前に集合した――
「これでそろったなっ!」
目に涙を浮かべながらビイトは言うが、ネクにはもう一人待っている人がいた。
ヨシュアは―?
と言いたいところだが彼はきっと来ないだろうと、思いとどまる。
そもそもあいつに騙されたようなものなのだ。信じてる―信じているけど……ちゃんとあの口から謝罪の言葉が出ない限り絶対許さない。だから早く…
トントン――
後ろから背中を叩かれ、急に現実に引き戻される。なんだと振り向くと、腹の立つ笑顔いつもの口調で「僕の事忘れてない?」と言う声がする。
「………ッ!」
嘘、だろ……ヨシュア…
ついさっき考えていた人の登場にすぐに返事ができなくて、変わりにシキが尋ねだした。
「わっ…君はさっきの―えっとヨシュア君?だよねっ」
「僕はネク君の二回目のゲームのパートナー兼元コンポーザーの桐生義弥。ヨシュアって呼んでいいよ」
ネクのパートナーだったのとシキの表情からそう伺えたが口にはだしていなかった。
「俺はビイト…こっちが妹の」
「ライムだよ」
「私は美咲四季!ねぇ、コンポーザーって事は私を…ネクのエントリー料にしたのって君?」
「それはメグミ君が…あ、あのグラサンがね、僕が不在の時に勝手に決めた事だよ」
「そうなんだ…」
「俺なんてコンポーザーの事ネクと倒そうとしてたけどな。なぁネク」
急に話を振られて戸惑った。そしてビイトの呼び掛けには答えずヨシュアを睨んで静かに呟いた。
「お前どういうつもりだよ……。
急に居なくなったりまたこうして現われたり」
(いつだって勝手で。)
「俺をゲームに参加させた事とかだって―正直まだ戸惑っている」
それだけいうとネクはヨシュアから目をそらして
「でも……今は…また会えて、良かった」
それが率直な気持ちだった。
本当にみんなそろってうれしい、思ったことをぶつけた。
「俺が変われたのも―ある意味ヨシュアのおかげだ」
みんなも同じ気持ちなのだろうか、微笑んでいてくれた…
が、
一人だけ違った。
ヨシュアだけは微笑みじゃなかった。笑ってはいるのだが…
―満面の笑み。
ネクの背中に悪寒が走った。
コイツ…何かヤバいと思ったとたんヨシュアがカバッと抱きついてくる。
「ちょっ!?」
「僕も会えて嬉しいよ」
そしてすぐ体を離し(でも近い!)いつものニヒルな笑みで、ネクの顎を掴んで顔を寄せてきた。
「ネク君がそんな風に思ってくれてるなんてね…」
おどおどしてるネクを見て、抱きついた辺りからぽかんとしていたシキとビイトは
ハッとした表情になり二人のところへ駆け出した。
((お前に取られてたまるか…!!))
2人の気持ちが1つになった瞬間だった。
すかさずライムがネクの服の端をちょい、とつまんで引っ張った。
「何言ってるの?面白い冗談かな?
ねぇ、そんなことより僕、ゲームセンターとか行きたいなぁ」
3人の過剰な反応に一瞬驚いたヨシュアだったが、すぐに気がつく。
「フフ…なる程。やっぱりみんな敵なんだね」
「なんの話だよ…?」
再会は嬉しいのに…ひどく疲れたネクは一人のみこめないまま
千鳥足会館にあるゲームセンターに向かった。
「つかこれ…シリアスじゃないのかよ!?」
ネクの呟きは人込みで掻き消され誰の耳にも届くことなく消えた。