とある学園の死闘遊戯 罪

□第02話 一人
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 イーラァが倒され、翌日を迎えた。

 学園都市の住人が、たった一人を残して入れ替わるという“崩壊宣言”があったのは昨日のこと。

 今日、一体誰が残されたのだろうか。

 本当に皆は消えてしまったのだろうか。

 その日の朝、学園都市は恐ろしいほど静かだった。







 時は、更に二日後を迎える。

 残された“たった一人”が目を覚ました。

 学園都市が崩壊したとされた日から換算して、三日後のことだった。







 よたよたと歩み、廊下を進む。

 空気に混じる嫌な臭いを感じ取りながら、外の様子を窺おうと一室へと入り窓を開ける。

 窓から外の空気が風に乗って室内を満たすが、それは失敗だったような気がした。

 感じ取っていた嫌な臭いよりも更に強烈な臭気が舞い込んできたからだ。

????「ーーーッ!!? これは……ッ」

 寝起きで目が慣れないのか、視界がぼやけて見える。

 そこにあるのは良く見知った学園都市。

 “誰もいなくなった”静寂に包まれた学園都市。

 そして……。





 ビルも木々も発電機のプロペラも。

 ビルの合間に見えるアスファルトまでも。

 真っ赤な血に染められた、鮮血色で満ちた異常な学園都市の風景が広がっていた。





????「一体、何があったってんだ……!?」

 ここは、カエル顔の医者の病院。

 生命維持装置に入れられていた為か、彼には約三日のタイムラグがあった。

 目覚めてから生命維持装置を内側から壊し、外へ出てきた。

 病院内を満たしていた嫌な空気の正体が血の臭いであることに、彼が気付くのは遅くはなかった。



 学園都市に取り残された少年。

 垣根帝督は、現状の学園都市を知って驚愕せずにはいられなかった。



垣根帝督「……皆は何処に行った…。一方通行ッ? 初春ッ!?」

 地獄絵図と化した学園都市から一旦目を背け、病院内を駆け回る。

 自分が目覚めた、生命維持装置が置かれていた病室まで戻ってくると、そこに手紙が残されていることに気が付いた。

垣根帝督「……これは…」

 そこには一方通行から学園都市崩壊宣言に関する事柄が簡潔に書かれていた。

 スヴィル、もしくはインヴィという最後のトリックスターの手によって、学園都市が崩壊させられること。

 インヴィは呪術師であり、魔術師のトリックスターであること。

 学園都市に残される住人は“たった一人”で、その他の住人は“新たな住人”と入れ替わって消えてしまうこと。

 そして、その崩壊が始めるのはイーラァを倒した翌日からであることも明記していた。

垣根帝督「俺は三日も眠ってたってのか……。だが、自分にムカついてる場合でもねえよな……」

 その時、垣根以外に誰もいないはずの病室内から、もぞりと何かが動く音が聞こえた。

 何かと思い周りを見渡すと、それは直ぐに目についた。





 見たこともない生物が、ドロドロの眼球を垣根へと向けていた。

 紫色をしたゲル状の体。

 常に溶けているかのような口や、むき出しのドロドロとした眼球。

 どこが手でどこが足かも分からない、スライムのような動き。





 垣根は本能を刺激されたような感覚に襲われ、咄嗟に正確に鮮明に勘付いた。

 “これはヤバい! 殺される!”と。

垣根帝督「ーーーッ!!!!」

 垣根が動くよりも早く、眼前の生物が垣根へと突進してきた。

 間一髪で避けた垣根は、交戦することなく病室を飛び出す。

垣根帝督「クソッ!! どうなってんだ! あれが“新しい住人”って奴なのか!?」

 後ろを振り返ることもなく、垣根はカエル顔の医者の病院から飛び出した。

 その際、病院内で誰かと擦れ違うこともなかった。
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