とある学園の死闘遊戯U

□第12話 消
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 土御門たちは、すでに手詰まりとなった状況に悔しさを感じていた。

 一方通行たちが落ちた方角は分かるものの、正確な場所までは分からないのだ。

土御門元春「クソッ!! ここまでか……ッ!」

 思わずサングラスを外して地面に叩きつけた。

 粉々に砕けたサングラスを見てから、白井は土御門の顔を見た。

白井黒子「……それ、義眼ですわね?」

土御門元春「……あぁ、冥土帰しに頼んでてな…」

 土御門の左眼窩には、異様に綺麗な眼球が収まっていた。

 右目に合わせて正確に動くほど、その義眼は高度なようだ。

空波陸「で? これからどうするよ、ってとりあえず話し掛けとくよ」

 空波の言葉に、一瞬だけ沈黙の時が流れる。

 直ぐに沈黙を破ったのは、初春だった。

初春飾利「私、垣根さんたちを追いかけてみます……」

白井黒子「場所は分かりませんわよ?」

初春飾利「それでも、何もしないよりはマシだと思いますので……」

 フラフラと、立ち上がった初春は歩き出す。

 それを見た土御門も立ち上がる。

土御門元春「同感だが、ちょっとだけ待ってくれ」

 初春を止め、携帯を取り出した土御門。

 もう七時を回っており、暗くなってきた辺りに携帯の液晶が眩しかった。

土御門元春「サングラス、壊さなきゃよかったぜい……」

 携帯を耳に当て、応対を待つ。

 2コール目にして、通話先が応対した。

海原光貴『用件は何でしょうか?』

土御門元春「開口一番がそれか。ある意味で優秀だよ、お前は」

 思わず笑ってしまう土御門だったが、用件は早く済ますに限る。

土御門元春「一方通行と垣根帝督の居場所をサーチしてくれないか? なるべく早急にな」

海原光貴『了解しました。少々、お待ちくださいませ』

 そこで通話が切れる。

 土御門は、次の連絡先を選択しようとして、やめた。

土御門元春「カミやんには……、必要ないか……」

 おそらく、上条に現状を報告する理由はない。

 彼なら、もうすぐ事件を終わらせてくれるはずだ。



 学園都市最強が認めた、替えの効かない“ヒーロー”なのだから。







 カエル顔の医者の病院。

 美琴の顔から包帯が外れた。

 鏡の前に立っている美琴は、ゆっくりと口を開けた。

御坂美琴「…………」

 舌が、なくなっていた。

 喋ろうとしても、言葉にならない。

冥土帰し「僕の腕なら舌の一枚や二枚、簡単に作ってみせるよ? 患者に必要なものを揃え、完璧に治療するのが医者というものだ」

 背後から、カエル顔の医者が語りかける。

冥土帰し「長期入院は当然。しばらくは学校にも通えなくなってしまうけど、悪い話じゃないと思うよ? どうする?」

御坂美琴「…………」

 美琴は、今も戦っているはずの皆を思い浮かべた。

 一方通行は垣根と戦っていた。

 上条も戦っているはずだ。

 白井も、左腕を失っても頑張っている。

 美琴が出した結論は……。

御坂美琴「…………」

 サラサラと、手元の筆記用具に書き記す。



 “私は、一番後回し。他の皆を、完璧に助けてください”



冥土帰し「……僕を誰だと思っている? 皆を救ってやるのは当然のことだ」

御坂美琴「…………」

冥土帰し「皆の治療が終わったら、君の治療に取り掛かるとするよ」

 美琴は微笑む。

 サラサラと、更に書き加えた。



 “何か、手伝わせてください”



冥土帰し「……綺麗な包帯が足りなくなりそうなんだ。使い終わったものを洗ってくれるかな?」

 そう言って歩き出したカエル顔の医者に、スタスタとついていく美琴。

 彼女も、今の自分にできることを考えて、自分の力で、前を見据える。
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