新説 とある学園の死闘遊戯

□第12話 白
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方向転換「スクラップ、だと……ッ!?」

一方通行「テメェの身体なンざ、もォいらねェ……。テメェの身体を使う必要なンざねェからなァ……!」

 フラフラになりながらも黒い翼を振るい、方向転換に攻撃する。

 紫の翼で防いだものの、衝撃までは防げなかった方向転換は後方へと飛ばされる。

方向転換「ぐゥッ!!」

一方通行「ハッハァ!! 打ち止めが目覚めて、妹達の暴走も治まった……。もォ、俺が心配するよォな未来はなくなった。テメェみてェなクソ野郎さえ消えちまえば、俺が生き残る必要はねェ!」

 折れた左腕を右手で押さえながら、方向転換は立ち上がる。

 一方通行の出血は血流操作で治まってはいるが、それ故に高度な演算が難しいはずだ。



 ならば、方向転換が選択できる勝利の道は一本だけ。

方向転換「………くっはは。卑怯だろォと知ったことか……。目の前のクズを潰すためなら、俺は喜ンでソレを選ぶ!」

 紫の翼を強く噴出させ、百合子の試験管を叩き割った。



一方通行「ーーーッ!!」

 ぐったりとした百合子の体が、紫の翼に包まれていく。

 毒々しい色をした翼に包まれた様子は、まるでそのまま死んでしまいそうな雰囲気を感じさせる。

方向転換「大人しくしてンだなァ、三流。可愛い妹を肉塊にされたくなかったら、テメェが代わりに肉塊にs」

 方向転換は、言い切ることが出来なかった。

 折れていた左腕を押さえていた右腕まで巻き込む形で、黒い翼が方向転換の左腕を肩から切断した。

方向転換「ーーーッ!? がァァあああああああああああああああああッ!!!!」

 方向転換は間違った選択をした。

 百合子を人質に取る行為ではない。

 一方通行を“本気で”怒らせたこと。

 どんな道や、どんな方法、どんな手段を取ろうとも。

 決して踏んではいけない地雷を、全身で踏み荒らしてしまったのだ。

一方通行「三流三流、うるせェ野郎だ……。今時“コイツの命が惜しけりゃ〜”なァンてのは三流の手本じゃねェのかよォ? あァ?」

方向転換「が、がああッ!!」

 痛みが引かない。

 紫の翼に代わって、黒い翼が百合子を包み始める。

 その間、方向転換の肩の傷口を、黒い翼が抉り続けているのだ。

方向転換「テンメェェぇぇええええええ!!!!」

一方通行「悪りィが、ソイツは返してもらうぜ。テメェと同じ空気吸わせンのも気の毒だからな」

 ピシッ、と何かにヒビが入る音が聞こえる。

 パラパラと、黒い翼の黒い色が剥がれ始めてきた。

方向転換「…な、なンだ…こりゃ……ッ!?」

一方通行「さァな。俺も知ったこっちゃねェ。だが、まァ……」

 少しずつ変わりゆく黒い翼に百合子を包み、自分の許へと引き寄せる。

 その衝撃が傷に伝わったのか、方向転換が短く悲鳴を上げた。



一方通行「テメェをぶっ潰せる力がある! それだけありゃ十分だ!!」



 腕の中で、もぞもぞと動きながら目を開ける。

 最初に飛び込んできたのは、自分に似た真っ白な姿。

 その顔が自分に気付き、溜息混じりの笑みを見せる。

一方通行「やァっとお目覚めかよ。遅すぎだボケが」

鈴科百合子「アッくんこそ……。助けに来るって約束、守るの遅いっつーの……」

 百合子の姿が、スゥッと消えていく。

 あの時の打ち止めと同じ現象だ。

一方通行(ほォ、こいつも脱出成功ってか)

鈴科百合子「……アッくん?」

一方通行「心配すンなよ。すぐに終わらせる……」

 完全に百合子の姿が消え、薄暗い部屋の中は一方通行と方向転換の二人だけになった。

 ゆっくりと、一方通行は方向転換を睨みつける。

一方通行「あとはテメェだけだ。粉末になる覚悟は出来てンだろォなァ?」
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