とある学園の死闘遊戯 罪
□第06話 代役
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美琴の右足首を持って立ち去ろうとするイーラァ。
頭部に一撃を貰った白井は、もうピクリとも動かない。
しかし、歩き去ろうとするイーラァの脚を掴む者がいた。
婚后光子だ。
婚后光子「………お、お待…ち、なさ……い……」
イーラァ「…………」
掴まれた脚を払って手を振り解き、再び進もうとするイーラァだが、婚后は諦めずに再度掴みかかる。
婚后光子「……み、御…坂……さん………離し…て………」
イーラァ「…………」
再び振り解いたイーラァは、グシャンッと婚后の掴み手を踏み潰した。
親指を除く四本の指が折れ曲がり、手の甲がボロボロに砕けてアスファルトに沈む。
しかし、婚后は痛みに苦しむ間も惜しいというように痛みを堪え、イーラァの脚に噛みついてみせた。
婚后光子「……フー…ッ……フー…ッ……!!」
イーラァ「……………」
AIM拡散力場。
浜面たちが第九学区に到着した時、もはや全てが遅かった。
携帯が鳴り、第二学区に向かっていた結標たちから連絡が入る。
結標淡希『残念だけど、もうこの学区にはいないようね。そっちはどう?』
浜面仕上「…………こっちも間に合わなかった。悪いけど急いで連絡しなきゃなんねぇから切るぜ」
結標の返事も待たずに、浜面は携帯番号を入力する。
3コールほどで相手が応答した。
冥土帰し『はい、急患ですかな?』
浜面仕上「あぁ、急いで救急車を寄こしてくれ。場所は第九学区だ」
この声は……、と思ったカエル顔の医者だが事柄の優先順位が理解できている彼は浜面から詳しい位置情報を聞き出して救急車を手配する。
冥土帰し『すぐに向かわせるよ。患者の数は二人だったね。容態は?』
その問いに、浜面は見た目の事実を口にする。
浜面仕上「一人は気絶してるだけだが、もう一人はヤバい。吐血が止まんねぇし手もグシャグシャだ! しかも、両目を潰されてんだ! マジで死んじまうよ!」
ここの場にいた男が取った行動は酷く簡潔。
もう自分を追うことが出来ないように、少女の両目を蹴り潰したのだった。
第九学区に救急車が到着すると同時に、第二学区から結標たちも到着した。
運び込まれていく白井の姿を、結標は複雑な面持ちで見送った。
救急隊員は、電話の主をキョロキョロと捜していたようだが、すぐに諦めて救急車に戻る。
目の前にいるが、彼らに浜面たちは視覚できない。
サイレンを鳴らしながら遠ざかっていく救急車を見送りつつ、浜面は携帯を操作する。
誰かに連絡している最中、滝壺と絹旗は原子崩しと共に“パーツ”を見つけ出した。
滝壺理后「麦野の、右上半身……」
絹旗最愛「これで全部……。超そう思ってました……」
原子崩し「ですが、これでは……」
麦野の体は完成した、はずだった。
しかし、よく考えてみれば肝心なものが欠けている。
浜面たちが集めた麦野の体には、首がなかった。
花一匁目「どうする? あと首一つってことは、第六位か?」
浜面仕上「いや、目指すは第十三学区だ」
通話を終えた浜面は、麦野の体を背負いなおして呟いた。
結標淡希「第十三学区に何かあるのかしら?」
浜面仕上「上条の大将がいる。そんでもって、スヴィルもそこにいたらしい」
浜面が電話を掛けた相手は上条だった。
そして、そこにはスヴィルがいた。
AIM拡散力場を伝えば、運良く鉢合わせする可能性もある。
浜面仕上「直接、元凶に殴り込んだ方が早ぇだろ。このふざけたゲーム、さっさと終わらせるぞ!」