とある禁書の二次創作
□Ib 〜Halloween nightU〜
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資材置き場の開けたスペース。
その中心に設置された“ミルククラウン・ドレス”の像。
そして、それを取り囲む形で集まったパーティーの招待客たち。
ここにいる者たちは皆、芸術品には目がないお金持ちばかりで、パーティー会場で見世物として作品を持ってきていた男が司会を務めていた。
「さあさあ皆様、お次は何方が入札いたしますかー!?」
その声に続いて、作品を取り囲んでいた招待客たちが挙手して口々に金額を連呼する。
「120万!」
「124万よ!」
「…よぉし、130万でどぉだ!!」
「はっはぁ! 135万!!」
「139万で勝負!!」
口々に交わされる金額の争い。
何が起きているのか分からないイヴとメアリーに、ギャリーとウォルターが解説する。
その表情には、会場の様子を称するような呆れが浮かんでいた。
ギャリー「“オークション”、ってやつね……。信じられないわ……」
イヴ「…オークション?」
ウォルター「競売だよ。あんな風に出された物品を、買い手側が価格を釣り上げて購入する商売の一種」
ギャリー「最終的に最も高い価格を提示した買い手に販売するのよ。買い手が金額を提示することを“入札”、購入が決まることを“落札”というわ」
メアリー「……てことは、ここにいる招待客が提示した金額よりも高い金額を提示すれば“ミルククラウン・ドレス”を取り戻せるの?」
ギャリー「そうよ。でも……」
メアリー「なら!」
ギャリーの解説を遮り、メアリーは挙手して司会者に聞こえる大声で叫んだ。
メアリー「ーーー500万!!」
オークション会場、沈黙。
ギャリー「………え…?」
メアリー「……?」
イヴ「……? どうしたの?」
ウォルター「………本物の馬鹿だ…」
会場内が、メアリーに注目してヒソヒソと騒めく。
メアリー「あれ? 何か変だった?」
ギャリー「……メアリー、あのね…。ただ高い金額を言えば勝ちってわけじゃないのよ…」
イヴ「え? そうなの?」
ギャリー「イヴも覚えておきなさい。これは競売、つまりは商売の一種なの。買い物なの。つまりね……」
ギャリー「提示した金額(500万)で落札した場合、アタシたちがそれを払わなくちゃいけないのよ……」
メアリー「…………え……?」
ウォルター「……馬鹿」
会場内はまだ治まらない。
「いや、あんな子にそんな金があるはずがない……」
「確かにそうよ、なら不正落札ってことで仕切り直しに……」
「いや待て、また一から初めては手の内を明かすも同然だ……。俺は続けるぞ! 501万!!」
「…!? な、なら…510万よ!!」
「ええい!! 550万でどうじゃあッ!!!!」
オークション再開。
メアリーの入札金額が上回ったことで、とりあえず出費の心配はなくなった。
ギャリー(でも、逆に言えば手詰まりも同然だわ……。何とか上手く切り抜けなくちゃ…………ん?)
ふと、ギャリーはイヴに視線を向けた。
何やら手元に視線を落とし、指折り数えて計算している様子だ。
ギャリー「イヴ? どうかしt」
ギャリーの問いに被る形で、スッとイヴは挙手して叫んだ。
イヴ「ーーー960万!!」
オークション会場、再び沈黙。
ギャリー「………………イヴ?」
メアリー「…………あ、れ……」
ウォルター「……………」
イヴ「ドヤァ」
ドヤ顔されても事態は誤魔化せない。
ギャリー「……イヴ、アンタ、何、考えて……」
イヴ「大丈夫だよ、ギャリー」
ギャリー「へ?」
チラッとイヴはギャリーたちに見えるように、黒色のカードを懐から出して見せつけた。
イヴ「9600万“程度”なら、アイファンズ家の貯金にも響かないから」
イヴが提示したのは、響かない程度の貯金額の十分の一。
つまり、もし上回る入札があってもまだ対処できるのだ。
メアリー「ーーーイヴぅぅぅッ!!!!」
ギャリー(イヴ男前ッ!?)
ウォルター(つーか、マジで財力パネェんだな……)
あまり表に出ることはないが、イヴは大企業宝石店の副店長の娘なのだ。