新説 とある学園の死闘遊戯

□第02話 他
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 翌日の早朝。

 警備員第73支部の出入口にて、二人の人影が立っていた。

 上条当麻と黄泉川愛穂である。

上条当麻「ったく、早々に拳骨ってのァねェンじゃねェか?」

黄泉川愛穂「拳骨で済んで良かったと思えじゃんよ……。まったく……」

 もちろん、上条の中身は一方通行である。

上条当麻「オイ、なに泣いてやがる」

黄泉川愛穂「泣いてなんか、ないじゃんよ……」

 そう言いつつも目元を隠す黄泉川の後ろから、警備員の後輩が顔を出した。

 黄泉川の後輩の、高山である。

高山浩太「お呼びになりましたか?」

黄泉川愛穂「あぁ、高山。こいつが、お前に用があるんだと」

 そう促され、上条を見やる高山。

高山浩太「第三学区の個室サロンに入った少年、ではないみたいだな」

上条当麻「ほォ、何で言い切れンだ? あァ?」

高山浩太「感じる雰囲気が別物だ。肉体変化の能力者なのか?」

 中身が上条でないことを見破った高山だったが、それが一方通行だとは見破れなかったようだ。

 隣にいた黄泉川が説明し、高山を納得させる。

 意外にも、高山はすぐに信じてくれた。

高山浩太「なるほどな。学園都市とは、毎日が良い刺激になる出来事ばかりだ」

上条当麻「そォいうテメェも、随分と毛深い心臓持ってるみてェだしなァ」







 少し離れた路地の裏道。

 垣根帝督と土御門元春が、とある男を連れて歩いていた。

 裏社会の情報屋にして、暗部組織の構成員。

 スクールの狙撃手、手塚義光である。

垣根帝督「しかし、まさか手塚が人体発火事件に関係していたとはな……」

手塚義光「それほど関わっちゃいないさ。ちょいと手出しした程度だよ、リーダー」

土御門元春「結果として、その手出しが解決の糸口になったみたいだがな」

 三人は会話を交わしながら路地裏を出る。

 そこには上条と高山が待っており、近場の公園を促していた。

上条当麻「行くぞ。テメェらには聞きてェことが山ほどあンだよ」







 土御門が飲み物を揃え、公園内の休憩スペースに腰を下ろす。

 おそらくはピクニックか子供用の遊び場として設けられているスペースなのだろうが、ラッキーなことに人はいなかった。

上条当麻「単刀直入に言うぞ。テメェら何モンだ?」

手塚義光「はっ、確かに直入だな」

 一方通行の質問に、スラスラと答えたのは高山だった。

高山浩太「俺たちは、もともと学園都市外部の人間だ。ここに来たのは、半年以上前になる」

上条当麻「……何のために、この学園都市に来やがった?」

 その質問には手塚が答えた。

手塚義光「言うならば“人捜し”だ。重罪人の一人を、追ってるってわけだな」

土御門元春「重罪人だと? 外部の犯罪者が学園都市に侵入して、潜伏中だとでも言うのか?」

高山浩太「いや、正確には“重罪を犯す可能性が極めて高い人間”と言った方がいい。更に言えば、そいつは外部の人間ではなく、元から学園都市の人間だ」

上条当麻「何だと……?」

 高山は、その捜し人の名を口にする。





高山浩太「そいつの名は“木原幻生”。この都市が誇る科学者、木原一族の一人にして、俺たちが体験してきた悪夢の“常連客”といったところだ」





 その名を聞いて、その場の全員が反応を示
した。

上条当麻「木原、だと……ッ!?」

土御門元春「チッ、また奴らか……」

垣根帝督「……なるほどな」

 高山たちの悪夢。

 それは、少しずつ語られていった。
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