新説 とある学園の死闘遊戯
□第07話 騙
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学園都市の第七学区。
カエル顔の医者の病院にて、白井が目を覚ました。
白井黒子「…………」
喋れない、というよりも喋り辛かった。
白井黒子(ここは……。わたくしは、一体……)
白井は微かに覚えていた。
初春と共に黒い侵入者たちに襲われ、首を撃たれる重傷を負ったこと。
初春と共に殺されそうになる瞬間、白い翼に包まれて助かったこと。
その翼の主が、学園都市の超能力者・第一位の垣根帝督だったこと。
白井黒子(おそらく、わたくしは救急車で運ばれたのでしょう……。しかし、初春は……?)
キョロキョロと目を動かして、辺りを確かめる。
白井の近くに、初春の姿は見当たらなかった。
垣根帝督は困っていた。
敵が手強いのではない。
身の回りの状況が問題だ。
垣根帝督「初春! 隙を見つけて遠くへ逃げろ! 流れ弾が当たっちまったらシャレにならねえ!!」
初春飾利「無理です!! この戦況に隙なんてありませんよぉ!!」
初春が安全地帯へ逃げ遅れてしまったのだ。
垣根なら未元物質の力を駆使して初春を守ることも可能だが、相手が最低限の防衛反応を持ち合わせていることが前提だ。
しかし……。
御坂妹「敵・排除」
肝心な相手は、どんな状況だろうと攻めの体勢を絶対に崩さなかった。
まるで“死ぬまで動き続ける”とでも言っているかのようだ。
垣根帝督(ちくしょう! せめて初春だけでも守りてえ……。いや……、ダメだ)
一瞬で、垣根は自分の考えを改める。
垣根帝督(アイツが死ぬ寸前、一方的に言われてたじゃねえか!! 学園都市を任せた、ってよお!!)
一方的に交わされた約束だからこそ、垣根は貫き通したい維持があった。
垣根帝督(初春も、学園都市も必ず守る!! そのためには、どうにかして初春の安全を確保した上で戦わなけりゃ……!!)
垣根が思考している最中、それは背後から走ってきた。
黒い侵入者たちの頭上を駆け抜けていった雷撃の槍は、その勢いだけで黒い侵入者たちを後方へと薙ぎ飛ばす。
垣根と初春が振り返ると、見知った少女が歩み寄ってきた。
学園都市の超能力者・第二位の御坂美琴である。
初春飾利「御坂さん!!」
垣根帝督「第三位……じゃなかったな、第二位の超電磁砲……」
御坂美琴「…………」
美琴は初春と垣根に一度だけ微笑み、黒い侵入者たちを見て目付きを変える。
垣根は、初春に悟られない程度の小声で美琴にコンタクトを取った。
垣根帝督「超電磁砲。アイツらの正体、察しがついてるか?」
御坂美琴「…………」
黙って頷く美琴。
垣根帝督「なら話しが早い。そして約束する。俺はアイツらを傷付けねえ」
御坂美琴「………?」
唐突な言葉に首を傾げた美琴は、黒い侵入者たちを見据える垣根の顔を見る。
垣根は静かに、初春を美琴へと押し渡した。
垣根帝督「だから頼む。初春を守ってやってくれ。そして俺を、必要最低限で援護してくれ」
垣根は、黒い侵入者となっている妹達を傷付けないと約束した。
嘘はないだろう。
その代わり、初春を守る役目を美琴に託した。
そして、相手と同じ電撃系の能力者最強である美琴に、少なからずの援護も頼んだ。
御坂美琴「…………」
フッと笑みを作る美琴が、持ち合わせている返答は一つだけ。
逃げ場を失ってしまった初春を背に庇いながら、垣根の隣へと戦闘態勢で並ぶこと。
学園都市が誇る、新生・超能力者。
第一位と第二位の共同戦線が今、始まろうとしていた。