新説 とある学園の死闘遊戯

□第08話 黒
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 学園都市の第七学区。

 大通りにて銃撃を開始する黒い侵入者たちに、垣根と美琴が共闘していた。

 撃ち出された弾丸を、磁力を操作して美琴が無力化させる。

 つまり美琴は、防御の役割を担っていた。

 対する垣根は、静かに目を閉じたまま微動だにしていない。

初春飾利「か、垣根さん! どうしちゃったんですか!? 御坂さんの防戦にも限界がありますよ!」

 美琴の背後から戦況を見守っていた初春も、垣根の様子に不安を感じる。

 もちろん美琴も焦っていた。

御坂美琴(初春さんを守りつつ戦場を生きるには、向かってくる弾丸を防ぐしか方法がない……。援護してって言われても、何もしてないじゃない!! どうすりゃいいのよ!?)

 そんな空気が流れていた時、咄嗟に“それ”は起きた。

垣根帝督「………待たせたな…」



 戦場の空気が、ガラリと変わった気がした。



 白く眩い光に包まれた垣根に、美琴と初春は驚いた。

 次の瞬間には、光の中から垣根が姿を現している。

 白い六枚の翼に、純白の眩い羽衣。

 その手には真っ白な弓矢を構えており、光り輝く矢が黒い侵入者たちへと向けられている。

垣根帝督「シュートッ!!」

 放たれた矢は黒い侵入者たちの頭を次々と貫いていく。

 しかし、黒い侵入者たちに肉体的ダメージがあるようには見えなかった。

 矢が頭を素通りしただけのようにも見えたのだが、確実な効力も窺えた。

御坂美琴「ーーーッ!?」

初春飾利「垣根さん……。この力は、一体……?」

 黒い侵入者は、その場にいる全員が動きを止めていた。

 まるで、見えない鎖に縛られているかのように、身動きが取れていない。

垣根帝督「この技は、一方通行に学園都市を任された後で生み出したモンだ」

 白い翼に白い羽衣、真っ白な弓矢を片手に持つ垣根は、のんびりと余裕をもって説明する。

垣根帝督「未元物質が生み出した存在しない素粒子から構成した羽衣をエネルギー源に、弓矢へと力の形を移して攻撃する。だが、まだ問題が二つほど残ってんだ……」

初春飾利「問題が二つ、ですか……?」

 初春の問いに、垣根は一度だけ頷く。

垣根帝督「一つは、この技が発動できるようになるまでの召喚時間(ローディング)が長いこと。もう一つは、発動してから一回しか攻撃できねえことだ」

 垣根の持つ弓に矢は存在せず、少しずつ矢の形として形成されていく。

 その創造速度は、恐ろしく長いようだ。

初春飾利「……つまり、使えるようになる準備時間が長い上に、一回使ってしまうとまたしばらく使えない、ってことですか?」

垣根帝督「そういうことだ。この矢に秘められた力は“対象の戦闘態勢を一時凍結させる”こと。応用次第で他の使い道もあるが、今のところはその程度だな」

 そして垣根は、美琴へと向き直る。

垣根帝督「この方法なら奴らを傷付けることはねえが、俺が次に矢を放てるようになる前に奴らの拘束は解けちまう。俺が言いてえこと分かるか?」

御坂美琴「…………」

 美琴は黙って頷いた。

 垣根が矢を放てば、黒い侵入者たちの動きが止まる。

 しかし次に垣根が矢を放てるようになるまでに、止めていた相手の拘束は解けてしまう。

 美琴が取ることが出来る援護とは、次の矢が形成されるまでの僅かな時間帯。

 黒い侵入者たちの攻撃を、さっきまでと同じように防ぎ続けていればいい。

垣根帝督「その繰り返しだ! それを続けていりゃ、ヒーローが事件を解決するだろうよ!!」

 黒い侵入者たちの拘束が解け、一斉に銃器が向けられる。

 美琴は防御のための磁場を形成し、垣根は矢の装填準備を始めた。

垣根帝督(一方通行……。てめえに任された学園都市は必ず守り通す……)

 その目に、確かな志しを映しながら……。

垣根帝督(だから何もかも片付けてこい! 学園都市の頂点に君臨するのは、てめえの方が適任だ!)

 垣根帝督は、誰かのためにも戦い続ける。
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