新説 とある学園の死闘遊戯
□第09話 利
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放たれた銃弾が、美琴の防御網を掻い潜って初春の頭をかすめた。
初春飾利「きゃッ!!」
御坂美琴「ーーーッ!!」
垣根帝督「初春ッ!!」
着弾しなかったものの、かすめた箇所は出血していた。
初春飾利「も、問題ありません。大丈夫です。垣根さんも御坂さんも、目の前に集中してください」
御坂美琴「…………」
垣根帝督「………おう…」
とは言うものの、現状は非常に厳しかった。
美琴の防御が潜られたのも、美琴が油断していたわけではない。
黒い侵入者の人数が、圧倒的に多くなってきたのだ。
その数、実に8500人以上。
とても三人(実質二人)で立ち向かえる人数ではない。
その時だ。
垣根たちより遥か前方にて、数人の黒い侵入者たちが空に打ち上げられた。
後に轟音が届いたため、明らかに戦闘による事柄だろう。
御坂美琴「ーーーッ!?」
垣根帝督「な、何だ!? 何が起きやがった…」
初春飾利「わ、分かりません……」
殴られたのか蹴り上げられたのか、黒い侵入者隊は次々と打ち上げられている。
それを見た垣根は、何やら違和感を感じていた。
垣根帝督(まさか……。まあ、奴なら外傷を与えずに無力化できるだろうが……。あまり考えたくねえな……)
垣根の予想は、言うならば“半分”当たっていた。
予想していた通り、その場所では学園都市の超能力者が力を振るっていた。
超能力者の第五位・ナンバーファイブの少年は叫ぶ。
削板軍覇「99.9%! すごく手加減パーンチ!!」
本人曰く“0.1%本気”のアッパーは、眼前の黒い侵入者たちを次々と打ち上げる。
そして、打ち上げられた全員が無傷の状態で気絶していた。
しかし、削板への発砲も休まることを知らない。
何百もの銃口から一斉に発砲され、水飛沫のように銃弾を浴びる。
削板軍覇「ハ〜ッハッハッハッ!! そんなものかッ!?」
だが効かない。まったく効かない。
最強の原石は、この程度では微塵も揺るがないのだ。
そんな化け物染みた削板に、歩み寄る者がいた。
緑色の髪をした、黒い神父服の青年は溜息を吐く。
ソンシャン「これじゃあ、学園都市は怪物の巣窟だ……。一人の戦いに苦戦してた俺が小さく見える……」
実は、この場で最初に戦っていたのはソンシャンだった。
得意の格闘戦術で黒い侵入者たちと交戦していたのだが、あまり傷付けずに、更には無力化する加減が難しく、本当の意味で苦戦していた。
ソンシャン(敵の外傷を考えない格闘技なら、全身骨折くらい朝飯前なんですけどね……)
削板軍覇「ん? 何か言ったか?」
ソンシャン「いいえ、別に」
戦いに苦戦していたソンシャンの前に現れ、敵を無傷で倒していく超能力者。
削板軍覇は突然参戦したのだ。
削板軍覇「それで? お前は味方と考えて良いのか? それとも倒しておいた方が良いのか?」
ソンシャン「……わざわざ言うまでもない、かな?」
そう言うと、ソンシャンは放たれた銃弾の一つを、正拳突きで弾き飛ばした。
その行為は、位置的に削板を守る立ち位置となっていた。
削板軍覇「……助けたつもりか? 銃弾相手に、生身の身体で」
ソンシャン「ただの意思表明だ。気にするな」
その言葉に、削板は歯を見せて笑う。
削板軍覇「気に入った! いい根性だ!! 俺に続け、格闘神父!!」
ソンシャン「……その呼び名、あまり上等じゃないな」
ソンシャンが呟く中、削板の“すごいパンチ”が炸裂する。
相変わらず敵を無傷で倒していく削板を見ながら、ソンシャンも戦いに参戦していった。