新説 とある学園の死闘遊戯

□第11話 竜
1ページ/4ページ


 カエル顔の医者は、病院の屋上から“窓のないビル”を見上げる。

 黒い侵入者が垣根たちと戦っているため、病院の周りは静かだった。

 そして、見上げる先の屋上には彼の患者が二人、対峙しているようだった。

冥土帰し「アレイスター……。もう君は止まってくれないんだね……」

 助けてあげられなかった患者を思い、とても残念そうに溜息を吐く。

冥土帰し「さて、この学園都市の命運はどうなるのかな……」







 垣根と美琴と初春は立ち尽くしていた。

 突然、黒い侵入者たちが動きを止めたのである。

垣根帝督「なんだ? 一体、どうしたってんだ……」

御坂美琴「…………?」

初春飾利「さぁ……? どうしたんでしょう……」

 まるで本物の人形のように、黒い侵入者たちはピタリと静止している。

御坂妹「…………」

 もう、何も話してはいなかった。







 削板とソンシャンも同じく立ち尽くしていた。

削板軍覇「何だ? 降参か?」

ソンシャン「……そんな雰囲気でもなさそうだがな……」

 急に攻撃を止めてしまった黒い侵入者たちを見て、削板は歩き去る。

削板軍覇「とんだ根性なしだ。俺は帰る」

ソンシャン(おいおい……)

 そんな姿に呆れるソンシャンは、動かなくなった黒い侵入者たちを一瞥すると、削板に続いて別方向へと歩き始めた。







 上空を飛ぶ小型旅客機も、この現状に気付いていた。

フィアンマ「何だ? エンターテイメントは終わりか?」

アックア「どうやら、そのようであるな」

 学園都市の戦況をリアルタイムで観ていただけに、この静けさは不自然に思える。

テッラ「何やら臭いますねー。何処かに戦況を治めた策士がいるのでは?」

ヴェント「知らないわよ、そんなの。それよりも、もっと面白そうなの見〜つけた♪」

 そう言ったヴェントの目線先に、その場の皆も視線を向けた。

 “窓のないビル”の屋上にて、見逃せないショーが始まっていた。

フィアンマ「あれはアレイスター=クロウリーか! 俺様を楽しませるショーが始まっているではないか!!」

テッラ「急にテンション上げますねー……」

アックア「むぅ、学園都市の統括理事長であるか……」

ヴェント「でも、もうお楽しみは終わりそうよ」

 現在の戦況を、ヴェントが見たままに解説する。



ヴェント「相手のツンツン頭、もう死にかけてるじゃん」







 “窓のないビル”の最上階。

 手塚と高山は、アレイスターがいるであろう部屋の扉の前にいた。

手塚義光「入るかい? 高山の大将」

高山浩太「そうだな。土御門を休ませた以上、俺たちまで留まっておく必要はない。もう彼は大丈夫だ」

 そう言って、目の前の部屋へと入室した。

手塚義光「…………」

高山浩太「…………」

 部屋の中には、誰もいなかった。

高山浩太「アレイスターは、逃げたのか……?」

手塚義光「ククク……、そいつは違うみたいだぜ」

 その言葉に高山は手塚へと振り返る。

 手塚が見ているのは、起動中のモニター映像。

 その内の一つに、窓のないビルの屋上が映し出されていた。

高山浩太「ーーーッ!? これはッ!!」

手塚義光「はぁ〜……、やれやれ……」

 その戦況を観て、手塚は素直な感想を呟く。



手塚義光「どうやら、最悪の展開になっちまってるみてえだな……」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ