新説 とある学園の死闘遊戯
□第11話 竜
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カエル顔の医者は、病院の屋上から“窓のないビル”を見上げる。
黒い侵入者が垣根たちと戦っているため、病院の周りは静かだった。
そして、見上げる先の屋上には彼の患者が二人、対峙しているようだった。
冥土帰し「アレイスター……。もう君は止まってくれないんだね……」
助けてあげられなかった患者を思い、とても残念そうに溜息を吐く。
冥土帰し「さて、この学園都市の命運はどうなるのかな……」
垣根と美琴と初春は立ち尽くしていた。
突然、黒い侵入者たちが動きを止めたのである。
垣根帝督「なんだ? 一体、どうしたってんだ……」
御坂美琴「…………?」
初春飾利「さぁ……? どうしたんでしょう……」
まるで本物の人形のように、黒い侵入者たちはピタリと静止している。
御坂妹「…………」
もう、何も話してはいなかった。
削板とソンシャンも同じく立ち尽くしていた。
削板軍覇「何だ? 降参か?」
ソンシャン「……そんな雰囲気でもなさそうだがな……」
急に攻撃を止めてしまった黒い侵入者たちを見て、削板は歩き去る。
削板軍覇「とんだ根性なしだ。俺は帰る」
ソンシャン(おいおい……)
そんな姿に呆れるソンシャンは、動かなくなった黒い侵入者たちを一瞥すると、削板に続いて別方向へと歩き始めた。
上空を飛ぶ小型旅客機も、この現状に気付いていた。
フィアンマ「何だ? エンターテイメントは終わりか?」
アックア「どうやら、そのようであるな」
学園都市の戦況をリアルタイムで観ていただけに、この静けさは不自然に思える。
テッラ「何やら臭いますねー。何処かに戦況を治めた策士がいるのでは?」
ヴェント「知らないわよ、そんなの。それよりも、もっと面白そうなの見〜つけた♪」
そう言ったヴェントの目線先に、その場の皆も視線を向けた。
“窓のないビル”の屋上にて、見逃せないショーが始まっていた。
フィアンマ「あれはアレイスター=クロウリーか! 俺様を楽しませるショーが始まっているではないか!!」
テッラ「急にテンション上げますねー……」
アックア「むぅ、学園都市の統括理事長であるか……」
ヴェント「でも、もうお楽しみは終わりそうよ」
現在の戦況を、ヴェントが見たままに解説する。
ヴェント「相手のツンツン頭、もう死にかけてるじゃん」
“窓のないビル”の最上階。
手塚と高山は、アレイスターがいるであろう部屋の扉の前にいた。
手塚義光「入るかい? 高山の大将」
高山浩太「そうだな。土御門を休ませた以上、俺たちまで留まっておく必要はない。もう彼は大丈夫だ」
そう言って、目の前の部屋へと入室した。
手塚義光「…………」
高山浩太「…………」
部屋の中には、誰もいなかった。
高山浩太「アレイスターは、逃げたのか……?」
手塚義光「ククク……、そいつは違うみたいだぜ」
その言葉に高山は手塚へと振り返る。
手塚が見ているのは、起動中のモニター映像。
その内の一つに、窓のないビルの屋上が映し出されていた。
高山浩太「ーーーッ!? これはッ!!」
手塚義光「はぁ〜……、やれやれ……」
その戦況を観て、手塚は素直な感想を呟く。
手塚義光「どうやら、最悪の展開になっちまってるみてえだな……」